レビュー

Bluetooth対応になった電子メモパッド「Boogie Board Sync 9.7」

~手書きメモをPDFでワンタッチ保存。PCやスマホと連携も

「Boogie Board Sync 9.7」
4月中旬 発売

価格:15,800円(税別)

 「Boogie Board」は、米Kent Displaysが開発・製造する電子メモパッド。そのBluetooth対応版である「Boogie Board Sync 9.7」が4月中旬より発売となる。発売に先立ち製品を試す機会を得たので、レビューをお届けする。

 Boogie Boardのキモは、反射型の感圧式プラスチック液晶を採用している点で、スタイラスなどを使って表面に書き込むと、圧力でその部分だけが白く反転する。この表示の維持には電力が不要で、紙とペンの場合のように、書いたメモはずっと残る。もちろん、これでは本当にタダの紙とペンなので、消去(Erase)ボタンを押すと、電力で液晶をリフレッシュして、まっさらな状態に戻し、繰り返し使うことができる。バッテリを内蔵し、駆動時間は約5日間。

 もう1つの特徴が、保存(Save)ボタンを押すと、書いた内容を内蔵メモリにPDFとして保存できる点だ。本製品のタッチセンサーはただの感圧式なので、ある程度先の細いものなら、何でもペン代わりになる。ただし、筆跡の検出には電磁誘導式を利用しているので、筆記内容をきちんと保存するには、付属のスタイラスを使う必要がある。

 また、PCにUSBで繋ぐと、データの転送に加え、専用アプリ上にBoogie Boardに書いた内容をリアルタイム表示することもできる。

 本製品の使い方はいろいろあると思うが、ちょっとしたことを一時的に書き留めておきたい場合に使うと、紙を無駄遣いせずに済むので、地球環境にやさしい。筆者も、前モデルはファックスしたい資料の送り先番号を記録するのによく使っていた。

 なお、画面全体を消去することはできるが、やり直しや消しゴムのような機能はないので、修正することはできないため、下絵程度ならいいが、本格的な絵画となると、荷が重いかもしれない。また、書いた内容の保存はできるが、いったん画面を消去すると、過去に書いた内容を画面に呼び出すことはできない。

正面。液晶のサイズは製品名にあるとおり9.7型
側面。厚さは5mmなので鞄に入れても嵩張らない
付属のスタイラス
書いた内容の保存と消去を行なう、SaveとEraseボタン。その右のLEDは電源とBluetooth
角に電源ボタン。1時間放置しても自動的にオフになる
充電はMicro USB経由

 さて、ここまでは、従来のBoogie Boardでもできたこと。Boogie Board Sync 9.7の新機能はBluetooth接続に対応したことだ。これにより、PCだけでなく、スマートフォン/タブレットともBluetoothで繋ぎ、Boogie Boardに保存したPDFを無線で転送できるようになった。転送と言っても、Bluetooth接続を確立し、アプリを起動すると、PDFデータは自動的に同期されるので、ユーザーが作業を行なう必要はない。本製品には約1,000枚のPDFを保存できるが、スマートフォンと繋がると言うことは、どこでも書いた文書をクラウドにアップしたりメールで送れるということを意味し、本製品の活用範囲は格段に広がった。

 また、Androidを除き、Boogie Boardに書いた内容をリアルタイム表示するライブドローの機能も利用できる。例えば、Boogie Boardを接続したPCをプロジェクターに繋ぐと、ホワイトボードのように利用できる。ホワイトボードと違い、消す手間はワンタッチだし、内容はPDFに保存できる。若干の遅延はあるが、ほぼリアルタイムと言っていい。ライブドロー機能は、Androidでも後日対応予定だ。

 Bluetooth対応以外に、液晶部分も過去の製品より良くなっていると感じた。実機が手元にないので、一部記憶頼りだが、2011年発売の「Boogie Board Rip」と比べ、筆の線が細くなったことで、相対的に解像度が上がった。漢字でも1文字10mm四方に収まるくらいの小ささで書ける。見た目の解像度より、PDFの記録解像度はやや低いようなので、細部では差異が出るが、液晶に書いたものと、PDFに保存されたものが全然違って見えるということはない。

線が細いので、10mm四方程度の文字も問題なく書ける
これをPDFに保存したもの(左)とWindowsアプリで画面表示したもの(右、いずれも等倍表示)。電磁誘導では検知できていない部分で細かな差異はあるが、大きく表現が異なるほどではない

 また、Boogie Board Ripではまれに手のひらの圧力が検知され跡が残ったが、Boogie Board Sync 9.7では、意図的に強く手のひらを押しつけても全く反応しなくなったため、手の置き方を気にせず使うことができる。ペン先との摩擦の具合や、肌に触れた感触も心地よく、基本部分も強化されている。

 ソフトについては、PC版が最も高機能で、保存データの同期、ライブドローのほか、デジタイザモードも利用できる。ペイントソフトでは、スタイラスのボタンを押すと消しゴムが使えるようになるので、このモードを使うと、Boogie Board単体より本格的なイラスト作成が可能で、PC+マウスや、紙+ペンよりも効率的に描くことができるだろう。なお、これらの機能はBluetooth、USBどちらで繋いでも利用できる。

BluetoothでPCなどと接続可能。PCなら従来通りUSBでも接続できる
Boogie Board Syncアプリ。左から、ライブドロー、Evernoteアップロード、メール添付、同期フォルダの参照を実行するアイコン。Evernoteへは自動アップロードも可能
ライブドローの画面は、実際のBoogie Board Sync 9.7を模したもの。Boogie Boardに書くと、画面にもほぼリアルタイムで反映される。横向きや、全画面表示にも対応するので、PCからプロジェクター出力すると、ホワイトボードの代わりにも使える
設定画面。自動的な同期やアップロード、保存先などはここで設定できる
アプリをインストールすると通知領域にアイコンが追加。右クリックして、モードをデジタイザモードにすると、Boogie Boardがペンタブレットになる
iOS版アプリでもライブドローが可能
保存ファイルは自動で同期される
Android版はまだライブドローには対応しないが、同期したファイルにタグを付けて管理できる
パッケージに入っていたマニュアルらしいものは、この台紙だけ。アプリの解説は全くない

 改善を望みたい点としては、マニュアルが不親切なところと、価格が高めな点、筆圧の表現が難しいが挙げられる。マニュアルについては、パッケージの台紙に最低限のことが書かれているだけ。本体に何かを書いて、保存して、消去してということまでは分かるが、アプリの解説はまったくないのは不親切だ。

 本製品は筆圧検知対応とされており、Boogie Board本体では、強弱で2段階、それに加えてひらがな1文字に5秒くらいかけて押しつけるようにすると極太の線の3段階くらい書き分けることはできる。ただし、保存されたPDFでは線の太さがかなり異なって見える。筆圧については大きな期待はしない方が良い。

さっと書いた場合(最上段)と強めに書いた場合(中段)。1文字5秒くらいのペースでゆっくり強く書くと、さらに太くなる(最下段)
ただし、アプリ上(左)や保存されたPDF(右)では太さが異なっていた

 価格は15,800円(税別)となっている。保存機能のないBoogie Boardは5千円を切る価格だったが、保存できるBoogie Board Ripは当時14,800円だったので、電磁誘導センサー周りにそこそこコストがかかっているのだろう。値段の元を取る、あるいは何百、何千ページ分保存しても、紙のノートと違って重量やサイズが変わらないといったメリットを享受するには、ある程度の頻度や期間、使うことが前提となってくる。

 その点では、板書を写すことが多い学生や、ペーパーレス化を進めたいオフィス向けの製品と言えるだろう。個人でイラスト用途にも使えなくはないが、それが主目的なら初めからイラスト作成ソフトの対応度が進んでいるペンタブレットを買った方が良い。

 最後に仕様を書いておくと、本体サイズは190×283×5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は312g。対応OSはWindows Vista/7/8/8.1、Mac OS X 10.8以降、iOS、Android 4.0.3以降。

 以上の通り、Boogie Board Sync 9.7は、紙のように手軽に書き込んだり持ち運んだりでき、Bluetooth/USBで機器と接続すると、デジタルならではの使い方も付加される。価格はやや高いが、「ものを書く」という単純な用途だけに、活用範囲は広いだろう。特にBluetooth対応となったことで、PCを持っていないユーザーにも利用価値が生まれた。

公式動画

(若杉 紀彦)