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最新CPUは50年前の__万倍速い!進化の歴史を辿ってみた

 依頼はいつも突然である。

 「『ゲーム機プロセッサの進化』をお願いできませんか?」

 「俺ゲーム機全然知らないんだけど」

 実は何を隠そう、家庭用ゲーム機は何1つ遊んだことがないのである。そもそも中3の時からTVを見なくなったので、TVを使う家庭用ゲーム機はそもそも無縁なのである。んじゃゲームで遊んだ記憶はないのか? というとそうでもなく、大学の時にPC-9801を買って、そっちで遊んでいたのだが。

 まぁそれはともかく、そんなわけでゲーム機には超絶疎いので、自分でリストアップすると絶対漏れがあるから怖いとお答えしたところ、「では普通のPC用CPUの進化の歴史で」、「IMSAIからGH200あたりまで? 」、「GH200は普通のPC用ですか? 」……石油王なら普通のPC用として買うかもしれんぞ。

PC創成期(リスト1)

 時期的に言えば1970年台前半というか、1977年あたりまでがこれに該当する。ワンボードコンピュータ、もしくはその延長にある機種が出ていたころだ。

 具体的に言えば海外だと「Altair 8800」とか「IMSAI 8080」なんかは、バカでかい筐体に収められていたが、「TK-80」とか「LKIT-16」みたいにボード1枚というケースも珍しくなかった。

Intel 8080
Altair 8800
Apple I
TK-80

 ちなみに一覧には載せていないが、Mos Technologyの「KIM-1」とかFairchild Semiconductorの「F-8 Kit 1A/Mostek」の「F-8 Survival Kit」、Intelの「SDK-80」とか、要するにCPUベンダーが自社製品の拡販のための評価用ボードという形でリリースされたものも多い(富士通の「LKIT-16」とか、東芝の「TLSC-12A EX-0」などもこの類だ)。

 まだこの時期、メーカーは家庭用のコンピュータというものが成立するかどうか、自信が持てなかった時期である。なので評価用ボードをそのまま民生マーケットに流して、その反応を見ていたという感じだ。

 そんなわけなので、構成もまちまちだし、いろいろ家庭で利用するには難しいというか、本当に「使える人」向けの構成のことがほとんどだった(まぁそれでもこの時期にコンピュータに目覚めた人は多いのだが:筆者もその1人ではある)。

機種メーカー発売日プロセッサ周波数(MHz)コア数MIPSDMIPS v1.1
Mark-8Radio Electronics1974年7月i80080.510.03
Altrai 8800MITS1974年12月i8080210.64
IMSAI 8080IMSAI1975年12月i8080210.64
KIM-1MOS Technology1976年4月MOS 6502110.50.021
Apple-IApple Computer1976年8月MOS 6502110.50.021
Z-1Cromemco1976年8月Z80210.026
TK-80NEC1976年8月μPD8080A210.64
LKIT-16Panafacom1977年3月MN161021

【9時40分訂正】記事初出時、8080のMIPS値が誤っておりました。お詫びして訂正します。

ホームコンピュータ(リスト2)

 1977年あたりから、「ホームコンピュータ(Home Computer)」というマーケットが明確に立ち上がってきた。海外なら「Apple II」とか「PET 2001」、「TRS-80」、更に「VIC-20」など。日本なら「PC-8001」や「MZ-80C」、日立の「MB-6880(Basic Master)」などがこれに該当する。創成期との決定的な違いは

・BASICのインタプリタが標準搭載される

あたりかと思う。ホームコンピュータと言うように、家庭向けを志向しているが、当時そうした家庭向けのソフトウェアのマーケットはまだ立ち上がっていない。なので、利用者が自身でプログラミングする必要があり、そしてこの用途としてBASICが広く使われていたから、BASICインタプリタが動くのは必須だった。

Apple II
NEC PC-8001
シャープMZ-80C
ガラス基板に実装されたZ80

 加えればBASICのプログラムを動かすためにRAMの容量もちょっと増え、またカセットテープあたりを使う外部入出力インターフェイスが標準ないしオプションで必ず用意されるようになったのも違いではある。

 またTVへの画面出力もほぼ標準装備であった。IBM-PCが登場するまでは、さまざまなメーカーから、さまざまなアーキテクチャの製品が投入された。

機種メーカー発売日プロセッサ周波数(MHz)コア数MIPSDMIPS v1.1
Apple IIApple Computer1977年6月MOS 6502110.50.021
TRS-80Tandy Radio Shack1977年8月Z801.710.022
PET 2001Commodore Computer1977年10月MOS 6502110.50.021
MB-6880日立1978年9月HD468000.751
PC-8001NEC1979年9月μPD780C-1410.052
MZ-80Cシャープ1979年10月Z80210.026
Atari 800Atari Inc.1979年11月MOS 65021.810.90.037
VIC-20Commodore1981年1月MOS 6502110.50.021
PC-6001NEC1981年11月μPD780C-1410.052
Commodore 64Commodore Business Machines1982年8月MOS 6510110.50.021

MS-DOSとClassic Mac OSの出現(リスト3)

 1981年にIBM-PCが登場し、瞬く間にホームコンピュータのマーケットを駆逐してゆく。特に大きかったのはMS-DOSの発表であり、多くのアプリケーションがこのMS-DOS上で動作する形で出荷されるようになった。

 この中には、CP/M-80で大ヒットしていた「WordStar」/「WordMaster」とか「VisiCalc」といったアプリケーションも移植されるようになり、まずビジネス向けにマーケットが成立。これを受けて、さらに多くのアプリケーションがMS-DOS向けに移行し、さらにユーザーが増えるというポジティブフィードバック(好循環)がかかるようになった。

 この構図はApple IIの時にも存在した(VisiCalcが動作したことで、Apple IIにメモリを最大限増設、FDDも搭載した数千ドルコースのシステムが、ビジネス向けに飛ぶように売れた)が、IBM-PCはこれをもっと拡大した形で再現している。

80286
IBM-PC
Macintosh 128K
PC-9801

 そして出荷台数が増えるとビジネスだけでなく、コンシューマ向けにも販路が広がる。かくしてホームコンピュータのマーケットにIBM-PCが普及し始めた。面白いのは、ホームコンピュータ向けに性能や拡張性を落とした製品(たとえばIBM PC Jr.:日本だとIBM JX)は受け入れられなかったことで、結局フルスペックのマシンがホームコンピュータのマーケットに進出することになる。

 ここに殴り込みをかけたのがApple Computerの「Macintosh」で、価格的にはごく一部のエンスージャスト向けではあったものの、ビットマップスクリーンをフルに利用したGUIは革新的であり、しっかりと地歩を固めることになる。

機種メーカー発売日プロセッサ周波数(MHz)コア数MIPSDMIPS v1.1
IBM-PCIBM1981年8月Intel 80884.7710.310.3
PC-9801NEC1982年10月μPD8086510.320.3
FM-11富士通1982年11月MB68B09E+Intel 80882/810.520.46
IBM-PC/XTIBM1983年3月Intel 80884.7710.310.28
Macintosh 128KApple Computer1984年1月MC680007.810.680.6
IBM PCjrIBM1984年3月Intel 80884.7710.310.2
IBM-PC/ATIBM1984年8月Intel 80286610.90.6
FM-16β富士通1984年12月i80186810.4
PC-9801VMNEC1985年7月V301010.6

PC Compatibleと32bit Era(リスト4)

 1986年のCOMPAQ「Deskpro 386」はいろいろな意味で衝撃的な製品だった。もともとCOMPAQは1983年1月に「Compaq Portable」を発表している。これはIBM-PC互換、つまりPC-DOS(IBM-PC向けMS-DOS)がそのまま動作するMS-DOSマシンだった。

Compaq Portable
Intel 486

 この当時IBM-PCや後継のPC/XTやPC/ATは、BIOSのコードも回路図もすべて公開されていたものの、著作権で保護されており、これをそのままコピーすることは不可能だった。もちろんIBMにライセンス料を払って取得した例(松下電器)もあるのだが。そのため、この当時、多くのメーカーは独自のBIOSを利用したMS-DOSマシンを開発するが、そのままではMS-DOSもアプリケーションも動かない。なので、Microsoftやメジャーなアプリケーションベンダーに移植費用を支払って、自社向けのポーティングを依頼していた(これが理由でこの時期Microsoftは急速に売り上げを拡大している)。

 ところがCOMPAQはクリーンルーム設計で独自にIBM-PCやIBM-PC/ATと互換のBIOSを開発。このため、IBMにライセンス料を支払う必要がなく、IBM-PC用のMS-DOSアプリケーション(や、何ならPC-DOS自体)がそのまま動作するようになった。

 当初はCOMPAQだけがこれに成功していたが、1984年5月にPhoenix Technologiesがやはり同じようにクリーンルーム設計で独自の互換BIOS(完全互換のCBIOSと、これに改良を加えたABIOS)を発売したことで、COMPAQ以外のメーカーもIBM-PC互換機を自由に作ることが可能になった。

 加えてC&T(Chips and Technologies)やOPTi、AMI(American Megatrend Inc.)など複数のメーカーが、IBM-PCと同等の回路を数チップのLSIにまとめた、いわゆるチップセットを発売するようになったことで、IBM-PCやPC/ATなどより安価に、同等以上の性能を持つ互換機を発売できるようになった。

Phoenix Technologies
OPTi製のチップセット

 これにちょっと遅れて登場したのがCPUの32bitへの移行である。1979年9月にMotorolaは「MC68000」を発表し、1980年2月からサンプル出荷を開始。外部バスこそ16bitながら、内部は32bit設計だった。これに遅れること5年あまりの1985年10月に、Intelはi80386を発表する。このi80386をいち早く、というかIBMより先に採用したのがCOMPAQのDeskPro 386で、圧倒的な性能を発揮した。ほかの互換機メーカーもこれに追従、より高速なi80486や、さらにはi486 DX2/DX4などを採用する事例も出てきており、最後にはIBMまでこの流れに追従することになった。

 一方Apple Computerは1987年3月に「MC68020」を搭載した「Macintosh II」をまず投入。ついで「Macintosh IIx/IIcx/IIci/」……とさまざまな製品を「MC68030」をベースに投入し、さらに「MC68040」ベースのCPU搭載製品も追従させ、あたかもIntelとMotorolaのCPUの代理戦争の様相を呈した。

機種メーカー発売日プロセッサ周波数(MHz)コア数DMIPS v1.1DMIPS v2.1
Deskpro 386COMPAQ1986年9月i80386DX2015.45.8
PC-9801VXNEC1986年10月Intel 80286810.8
Macintosh SEApple Computer1987年3月MC680007.810.6
X68000シャープ1987年3月MC680001010.8
Macintosh IIApple Computer1987年3月MC680201613.22.8
PS/2 Model 80IBM1987年4月i80386DX2516.77.2
PC-9801RANEC1988年7月i80386DX1614.34.6
Macintosh IIxApple Computer1988年9月MC680301613.22.8
PS/2 Model 95 XP 486IBM1990年10月i486DX3311411.8
Macintosh Quadra 700Apple Computer1991年10月MC6804025120.819.3
PS/2 Model 95 XP 486IBM1992年10月i486DX26612823.6
X68030シャープ1993年3月MC6803025154.4
PC-9801BANEC1993年11月i486DX24011714.3
Performa LC575Apple Computer1994年5月MC6804033127.525.5

Windows 95とPowerPC(リスト5)

 1995年、「Windows 95」が発表。これに合わせて、各社とも高速なグラフィックスアクセラレータモデルを搭載するとともに、i486からPentiumに次第に移行を開始する。

 もっともこのころはさまざまな互換規格が乱立していた時期である。CPUではAMDのほかにCyrixやIDT、(もうちょい後になると)NexGenなどが互換CPUをリリースしたし、ビデオカードはISAとEISA、VL-Busが混在して、そこにPCIが投入されるという混乱期だ。

CyrixのCPU
IDTのCPU

 Windows 95にあわせてサポートされたUSBも当初はまともに動作せず、しかもOHCIとUHCIという2種類のコントローラが混在して、そのOHCIはWindows 95ではまともに動作しなかった。これはその後登場した「Windows 95 OSR2」で少し改善、「Windows 98」でさらに改善し、「Windows 98 Second Edition」あたりでやっと使えるようになったが、まぁそういう混乱期だったわけだ。

 これはMacintoshも同じで、1994年からPowerPCをベースとしたPower Macintoshへの移行がスタートしている。Classic Mac OSの「System 7.1.2」でOSのPowerPC対応と旧来の68KのコードをPowerPCのコードに動的に置き換える「Mac 68Kエミュレータ」が搭載。

 その後System 7.5で改良と安定性能向上が図られた(Appleの公式見解:ちなみにこの時期に筆者宅ではMacintoshに見切りをつけた)が、実際にはいろいろ問題が多かった。おまけに後継になるはずだったCopland OSが開発打ち切りとなり、1996年に「Mac OS 8」が登場するまでだいぶ酷いことになっていた。

 また日本ではこの時期、DOS/Vが急速に普及し、(Macintosh以外の)ほかの方式をほぼ駆逐してゆく。DOS/Vそのものは1990年に発表されたが、当初は日本語環境の充実に欠けるとかアプリケーションの対応が遅いなど、いろいろ阻害要因が多かった。

Windows 95でおなじみとなったスタートボタン
Mac OS 8

 ところがWindows 95の発売でアプリケーションがWindows対応にどんどん移行してゆくと、非PC互換機はむしろOSのアップデートが遅いとかドライバ対応が追い付かないなど、むしろネガティブに作用するようになった。結果、2000年頃にはほぼなくなっている(NECにしてからが、AT互換機であるPC98-NXを1997年にリリースしている)。そしてこの頃から、Windowsベースのマシンの性能は、メーカーとか機種とあまり関係なくなり始めた。

機種メーカー発売日プロセッサ周波数(MHz)コア数DMIPS v2.1SPECint 95_base
Power Macintosh 8100Apple Computer1994年3月PowerPC 601801113.32.2
Optiplex Series 1 4100/LeDell1995年i486DX4100168.3
Optiplex Series 1 566/LDell1995年Pentium661111.5
Power Macintosh 9500Apple Computer1995年6月PowerPC 6041501200.93.7
Optiplex Series 1 GXL 5xxxDell1996年Pentium2001338
Optiplex Series 1 GXproDell1997年Pentium Pro2001373
Power Macintosh 9600Apple Computer1997年2月PowerPC 604e23313129.3
Power Macintosh G3Apple Computer1997年11月PowerPC 750266112.7
Macintosh Server G3Apple Computer1998年3月PowerPC 750300114.3
Optiplex Series 1 GXaDell1999年4月Pentium II4501816

32bit OSの時代へ(リスト6)

 Macintoshは当初から32bit環境での提供であったが、x86はMS-DOSからスタートということもあり、長らく16bit環境に縛られてきていた。MicrosoftはWindows NTを1993年に投入するものの、GUIそのものの使い勝手の悪さもあって、ビジネス向けは兎も角コンシューマ向けとして普及していたか? というと流石にNoであった。

 ただWindows 95の登場でWin32 APIに対応したアプリケーションがコンシューマ向けにもリリースされ、2000年にWindows 2000が登場したことでコンシューマでも32bit OSへの移行が決定的になった。ここに至り、PC-9800シリーズを始めとする非PC互換のアーキテクチャx86マシンは、OSの移植が遅れるとかドライバの対応が遅いなどの問題により、急速に淘汰されるに至っている。

Windows 2000

 これは別に日本だけの話ではなく、海外の独自MS-DOSマシンはほぼこの時期に消えてしまって、PC互換機路線に鞍替えをしている。MS-DOSではない独自路線のマシン、たとえばCommodoreのAmigaは「Commodore」そのものが1994年に倒産して消えているし、シャープの「X68000」シリーズも1993年の「X68030」が最後の機種になってしまった。

 もう1つこの時期の大きなトピックは、AMDの興隆である。286世代まではIntelのセカンドソースとしてIntelと協業体制を築いてきたAMDは、386世代からIntelと激しく対立。実際「486」とか「Pentium」世代ではIntelの製品に後れを取るが、1995年にNexGenを買収。設計の進んでいたNx686のインターフェイスを変更して「AMD K6」として1997年に投入、やっとIntelにかなり追いつくことに成功する。1999年にはK7こと「Athlon」を投入、ここで完全に「Pentium III」と肩を並べ、ここから激しい争いが繰り広げられることになる。

K6
Pentium II
Athlon
Pentium III

 このIntelとAMDの性能競争は、当時まだ市場にあったRISC CPUを置き去りにする勢いで激化。SPARCやMIPS、Alpha CPUなどを突き放す勢いであり、かろうじてPowerPC陣営ではIBMの「G3」に続きFreescaleが「G4」をリリース、なんとか喰らいつくという状況だった。

 ちなみにIntelはこの当時、「IA-64」として知られる64bitアーキテクチャを並行して開発していたが、1999年にリリース予定だったMercedこと初代「Itanium」は2年遅れの2001年に投入されるが、性能が全然出なかった。2002年に改良型であるMckinleyこと「Itanium 2」が投入されて性能ギャップは多少縮まったが、「縮まった」程度でx86を凌駕するのは夢のまた夢といった状況であり、RISC陣営やIA-64は64bitアドレスのサポート、それとエンタープライズ向けのRAS機能を充実させることで、かろうじてx86との差別化を実現するといった状況だった。

Power Mac G4
Itanium 2
プロセッサシリーズ名メーカー or 開発コード名発売日プロセッサ型番周波数(MHz)コア数DMIPS v2.1SPECint 95_baseSPECint 2000PassMark v9
PowerPC G4Motorola1999年MPC7400400148418.2
Pentium IIIKatmai1999年2月Pentium III 600MHz6001112824.1
AthlonK71999年6月Athlon 600600127.2
AthlonK751999年12月Athlon 7501,000132.9
PowerPC G4IBM2000年06K53195001193.622.8
AthlonThunderbird2000年6月Athlon 1000B1,000142.9
Pentium IIICoppermine2000年7月Pentium III 1000MHz1,0001188046.8408284
Pentium 4Willamette2000年11月Pentium 4 1.5GHz1,50012047.1536132
PowerPC G4Motorola/Freescale2001年MPC7410550136325.1
PowerPC G4Motorola2001年MPC745086712002.838
Pentium IIITualatin2001年6月Pentium III 1400MHz1,40012632297
Pentium 4Willamette2001年8月Pentium 4 2GHz2,00012729.5735205
Athlon XPPalomino2001年10月Athlon XP 1800+1,5331671300
PowerPC G4Motorola2002年MPC74551,42013280.262.2
Pentium 4Northwood2002年1月Pentium 4 2.2GHz2,20013002.4784
Athlon XPPalomino2002年3月Athlon XP 2100+1,7331749323
Athlon XPThoroughbred2002年6月Athlon XP 2200+1,8001765329
Pentium 4Northwood2002年8月Pentium 4 2.8GHz2,80013821.31129
Athlon XPThoroughbred2002年10月Athlon XP 2800+2,2501933401
PowerPC G4Motorola/Freescale2003年MPC74571,26712926.855.5
Pentium 4 HTNorthwood2003年6月Pentium 4 HT 3.2GHz3,20014367.21404242
PowerPC G4Freescale2004年MPC7447/A1,6001369670.1
Pentium 4 HTPrescott2004年11月Pentium 4 HT 3.8GHz3,800151861863308
PowerPC G4Freescale2005年MPC74481,7001392774.4

64bitへの移行とマルチコア化(リスト7)

 2003年、AMDはまずOpteron、次いでAthlon 64をリリースし、ここでx64への移行を果たす。このx86の64bit拡張はMicrosoftが積極的にサポートしたこともあり、Intelも渋々これを受け入れた。

 次の波はマルチコア化である。それまでCPUのコアはほぼパッケージに1個であり、これを超える構成を出していたのはIBMのPOWERとかZなどのごく一部のハイエンド製品に限られていたが、AMDは「Athlon 64 X2」で2コア製品を投入。同じタイミングでIntelも「Pentium D」を投入し、2コア化がメインストリーム向けの主流となった。

 ちなみにこの時期、IntelはNetBurstアーキテクチャと呼ばれる高動作周波数のアーキテクチャが、プロセス側の問題で挫折。当時イスラエルで開発されていたBaniasと呼ばれる省電力x86のアーキテクチャを搭載したPentium Mをメインに据えることでなんとか立て直すが、この立て直しの間はIntelがAMDの後塵を拝すことになった。

Athlon 64 X2
Core 2 Duo
NetBurstアーキテクチャ採用でデュアルコアのPentium D
BaniasがベースとなったPentium M

 AMDはAthlon X2をさらに拡張した4コア製品を「Phenom」というブランドで2007年に投入。最終的に6コア製品までをラインナップするに至る。ではIntelは? というと、Pentium Mをデュアルコア化したCore DuoやCore 2 Duoを投入。このCore 2 Duo世代でやっとAMDをキャッチアップすることに成功している。

 もう1つのトレンドは、チップセット方式の終焉である。AMDはOpteron/Athlon 64でメモリコントローラをCPU側に統合したが、Intelがこの方式に追従できたのはだいぶ後、2008年に投入したNehalemアーキテクチャを利用したCoreプロセッサの世代からとなる。この方式は、結果から言えば互換チップセットを提供していた台湾の3社(VIA/ULi/SiS)のビジネスを終わらせることにつながっている。

 ちなみにPowerPC陣営は、2002年にIBMが「PowerPC G5」こと「PowerPC 970」をリリース。これを利用したPower Macも投入されるものの、Appleは2005年にIntel CPUを利用したMacを発売することを公表、2006年から実際に製品が投入され、ここでPowerPC陣営も力尽きることになった。

 PowerPCそのものは組み込み向けにターゲットを移してその後も製品展開を行なおうとするが、IBMが先に離脱。Freescaleも組み込み及びネットワーク向けの製品がArmベースの製品に次第に切り替わっていき、最後まで残った自動車向けも2020年台に入るとArmに置き換えられたことで、事実上消滅してしまった。

Power Mac G5

 もうこの時点では、IBMの高信頼性サーバー向けのPOWERとZ、同じく高信頼性サーバー向けのItaniumが残るだけで、高性能プロセッサの座をほぼx86が占めることになり、あとはそのトップの座をAMDとIntelが競うという構図になったわけだ。

プロセッサシリーズ名メーカー or 開発コード名発売日プロセッサ型番周波数(MHz)コア数DMIPS v2.1SPECint 2000PassMark v9GeekBench 6
PowerPC G5IBM2002年10月PowerPC 9702,00015800898
Pentium MBanias2003年6月Pentium M 1.7GHz1,7001368
Athlon 64SledgeHammer2003年9月Athlon 64 FX-512,2001437
PowerPC G5IBM2004年1月PowerPC 970FX2,700178301169
Pentium MDothan2004年5月Pentium M 7552,0001416
Athlon 64ClawHammer2004年10月Athlon 64 FX-552,6001622
Athlon 64 X2Manchester2005年1月Athlon 64 X2 4600+2,40021214356
Pentium DSmithfield2005年4月Pentium Extreme 8403,20021484
Pentium MDothan2005年6月Pentium M 7802,2661365
Athlon 64San Diego2005年6月Athlon 64 FX-572,8001795
PowerPC G5IBM2005年7月PowerPC 970MP2,500292501438
Core DuoYonah2006年1月Core Duo T26002,1672941
Pentium DPresler2006年3月Pentium Extreme 9653,6002912
Athlon 64 X2Windsor2006年5月Athlon 64 X2 5000+2,60021306398
Core 2 DuoConroe2006年7月Core 2 Extreme X68002,933231191810564
Athlon 64Lima2007年2月Athlon 64 3800+2,4001635212
Core 2 QuadKentsfield2007年7月Core 2 Extreme QX68503,00043252
Athlon 64 X2Windsor2007年8月Athlon 64 X2 6400+ Black Edition3,20021730509
Core 2 QuadYorkfield2008年3月Core 2 Extreme QX97703,20044332
PhenomAgena2008年3月Phenom X4 9850 Black Edition2,50042811728
Core 2 DuoWolfdale2008年8月Core 2 Duo E86003,33322328757
Phenom IIDeneb2009年1月Phenom II X4 940 Black Edition3,000433231051
Phenom IIDeneb2009年11月Phenom II X4 965 Black Edition3,400438711415
Phenom IIThuban2010年4月Phenom II X6 1090T Black Edition3,200651521773

AMDとIntelの失速(リスト8)

 2011年、AMDは満を持して(?)Bulldozer/Bobcatという新しいアーキテクチャに基づくAMD FXシリーズの製品を投入する。スループットコンピューティング、つまりIPC(単位時間あたりに処理できる命令数)よりも、単位時間あたりで処理できるデータ量が重要になってくる、という見立ての元に、非常に奇抜な内部構造で実装されたBulldozerアーキテクチャは、案の定性能が出ず、2010年の時点で3割近くあったAMDのシェアは、たちまち1%を切るところまで激減。責任を取る形でCEOとCTOの首が飛ぶことになった。

 幸い同時に開発していたBobcatはインオーダーのシンプルな構造で、エリアサイズも小さく性能/消費電力比も良いということでAPU系の製品に使われたし、その後継のJaguerはPS4やXbox Oneで採用されたことで、かろうじてAMDの命脈をつなぐことができた。Bulldozerの方もその後Piledriver/Steamroller/Excavatorと、細かな改良を施しながら、なんとかZenコアまでの間を埋めた。この時期AMDは、2006年に買収したATIのGPU製品と、それこそPS4やXBoxといったセミカスタムでかろうじて存続が可能という状況だった。

 一方のIntelは、2011年に導入したSandy Bridgeベースの第2世代Core製品が非常に好調であり、これに続き2012年にはIvy Bridge、2013年にはHaswellを順調に展開した。ところがこれに続くBroadwellでは14nmプロセスに躓き、なんとかモバイル向けのみは2014年に展開したものの、デスクトップ向けの投入は2015年6月までずれ込んだ。

 その2カ月後の2014年8月には、14nmプロセスの問題をアーキテクチャ側でカバーしたSkyLakeベースの第6世代Coreが投入。ただこれに続く10nmプロセスの開発はさらに難航し、対応策としてわずかに構成を変えたSky Lake Refreshとも言うべきKaby Lakeを2016年8月に、構造はそのままにコア数を6コアに増やしたCoffee Lakeを2017年10月に投入する。

AMD FXシリーズ
IntelのSkylakeこと第6世代Core

 それでもまだ間に合わず、2018年には8コアに増やしたCoffee Lake Refreshを投入、さらに2020年には10コアまで増量したComet Lakeを投入するものの、このころには既にAMDがZenコアやZen 2コアを実装したRyzenを投入したことで、再び苦しい戦いを強いられることになった。

 AMDはBulldozerの投入で6年余りを無駄にすることになったが、Intelも14nmと10nmのプロセスでやはり6年余りを無駄にした格好だ。

プロセッサシリーズ名開発コード名発売日プロセッサ型番周波数(MHz)コア数PassMark v9GeekBench 6CineBench R23
CoreBroomfield2008年11月Core i7-9402,900450471491
CoreClarkdale2010年7月Core i7-980X3,333681752600
CoreSandyBridge2011年1月Core i7-2600K3,300482132311
CoreGulftown2011年2月Core i7-990X3,467684912616
AMD FXBulldozer2011年9月FX-81503,600877691703
CoreSandyBridge2011年11月Core i7-3960X3,2006121483341
CoreIvyBridge2012年4月Core i7-3770K3,500493702480
AMD FXPiledriver2012年5月FX-83704,000891712030
CoreHaswell2013年6月Core i7-4770K3,500498894067
CoreIvyBridge2013年9月Core i7-4960X3,6006135443381
AMD FXSteamroller(Kaveri)2014年1月A10-7850K3,700452361144
CoreHaswell2014年8月Core i7-5960X3,0008159107391
CoreBroadwell2015年6月Core i7-5775C3,3004108374848
CoreSkylake2015年8月Core i7-6700K4,0004112504894
CoreBroadwell2016年5月Core i7-6950X3,00010198928420
AMD FXExcavator(Bristol Ridge)2016年9月A12-98003,800455591649
CoreKaby Lake2017年1月Core i7-7700K4,2004120325102
CoreCoffee Lake2017年10月Core i7-8700K3,7006159766432
CoreCoffee Lake Refresh2018年11月Core i9-9900K3,600820228797812403
CoreComet Lake2019年8月Core i9-10900K3,70010925117229

AMDの復活とIntelの立て直し、Apple Siliconの登場(リスト9)

 2017年、AMDはZenコアベースのRyzen 1000シリーズを投入、ほぼ0に近かったCPUのシェアを10%程度まで回復することに成功する。続いてさらにはサーバー向けのEPYCと同じソケットを利用したハイエンド向けのRyzen Threadripperも投入した。

 最初のRyzenはGlobalFoundriesがSamsungからライセンスを受けて量産を行なった14nm LPPプロセスを採用したが、翌年にはプロセスを改良型の12nmに変更したZen+ベースのRyzen 2000を投入。Ryzen ThreadripperもやはりZen+に移行する。加えてモバイル向けを転用したRyzen 2000Gシリーズも発表。内蔵GPUがない、というRyzen 1000シリーズの欠点を補うことに成功する。

初代Ryzenを手にするLisa Su氏
Ryzen Threadripper

 2019年、AMDはこれまでのGlobalFoundriesからTSMCに製造委託先を変更。TSMCのN7プロセスでRyzen 3000シリーズやRyzen Threadripper 3000シリーズを製造する。このTSMCのN7というのは、Intelで言えばほぼ10nmというか、10nm SuperFinに相当するプロセスであり、ついにAMDがIntelに対して製造プロセスで先んじた瞬間でもある。

 またこのZen 3世代は、完全なチップレット構造を業界に先んじて導入した(何をもってチップレットと呼ぶか、という議論はあるのだが)という意味でも画期的であった。コアそのものもZen 2アーキテクチャに刷新され、Zen/Zen+世代からIPCの引き上げに成功している。

 2020年には7nmプロセスを引き続き使いつつ、内部アーキテクチャをZen 3に刷新したRyzen 5000シリーズを投入。この世代では、さらに一部の製品に3D積層の形で64MBのL3キャッシュを追加実装、96MBものL3を利用可能にした製品をリリース、特にゲーミング向けに性能が大きく向上することをアピールした。

 そして2022年9月、ついにTSMCのN5プロセスを利用したRyzen 7000シリーズを投入。この世代ではまたRyzen Threadripperもコンシューマ向けに復活している。統計の取り方(出荷数量を比較するか、出荷金額を比較するか、などなど)で数字は変わるが、おおむねAMDはクライアント向けのマーケットシェアで3割程度を確保するに至っている。これは2010年、つまりBulldozerアーキテクチャの投入でシェアを失う直前の状況にほぼ近い状況である。

 一方のIntelであるが、モバイル向けに関しては2018年のCannon Lake、2019年のIce Lake、2020年のTiger Lakeと3世代にわたって10nmプロセスの製品を出荷したものの、そのTiger Lakeでもまだデスクトップ向けに必要な動作周波数を実現できなかった。

 これを見越して、というのも変だが、本来10nmプロセスに合わせて投入予定だった新アーキテクチャを14nmに逆移植する形で2021年に投入されたのがRocket Lake世代の第11世代Coreプロセッサであり、ここである程度Ryzenとのギャップを縮めることに成功する。ギャップというかピーク性能で言えばRyzenを凌駕しているのだが、性能/消費電力比では全然追いつかないというもので、何しろ14nmプロセスを使いながら7nmプロセスの製品より性能を上げようとしたら、消費電力が増えるのは必然である。

 コア数もComet Lakeの10コアから8コアに減っているが、これはより複雑なコアを採用したためコアあたりのエリアサイズが増え、同じコア数を維持しようとするとダイサイズがかなり大きくなってしまうことを避けたためである。

 これに続き、2021年10月にはやっと10nm(Intel 7と改称)を使ったデスクトップ向けCPUであるAlder Lakeが出荷可能になった。このAlder Lakeは高性能・高消費電力のP(Performance)コアと、高効率・省スペースのE(Efficient)コアを組み合わせたハイブリッド構造になっており、シングルスレッドの高負荷処理はPコアを、マルチスレッドの処理はPコア+Eコアを、負荷の低い処理はEコアを使う、という「うまく動けば理想的だが、それをどうやって割り振るか大問題」なアーキテクチャを採用、大問題の解決のために、Thread Directorと呼ぶハードウェアベースのスケジューラを搭載してこれへの対応を図った。

Rocket Lakeこと第11世代Core
Alder Lakeこと第12世代Core

 この後継が2022年10月に発表されたRaptor Lakeである。基本的な構成は変わらないが、プロセスがIntel 7+とでも呼ぶ若干の改良型になり、またEコアが16個に増強された。ただIntel 7というのは概ねTSMCで言えばN7相当のもので、先にTSMC N5に移行したRyzen 7000シリーズには性能/消費電力比の点でビハインドを負っているのは相変わらずである。

 またAlder Lakeでもその傾向はあったが、Raptor Lakeでは性能を稼ぐために、電力や放熱の許す限り、動作周波数を上げる実装がなされており、本来省電力性を重視しているはずのEコアがフル稼働するという、ちょっと本末転倒な状況になっている。

 本来このRaptor Lakeの後継には、デスクトップ向けにもMeteor Lakeが投入されるはずだったが、割と早い段階でこの計画が破棄。後継は2024年後半のArrow Lakeになることがアナウンスされており、それまでの中継ぎとして2023年10月に発表されたのがRaptor Lake Refreshである。IntelとしてはArrow LakeでAMDを完全にキャッチアップする予定であるが、このあたりはプロセスとの兼ね合いもあり、まだ確たる情報はない。

 もう1つの勢力がAppleである。2005年にPowerPCを捨ててIntelに鞍替えした同社であるが、2020年に今度はIntelというかx86を捨てることを発表、まずは自社開発のApple M1を投入する。CPUやGPUコアの数に応じて無印/Pro/Maxの3種類のダイと、さらにMaxのダイ2つをMCMの形で接続したUltraという4種類のSKUを発表。

M1 Max
M3シリーズ
M2 Ultra

 2022年にはApple M2、2023年にはApple M3とプロセス微細化やコア数増加、コアそのものの強化を行いながら現在も進化している。絶対性能としてx86を上回っているか? というと、ベンチマークの結果を見る限りはそこまで大きな差はなく、ただしメモリまでチップ上に統合することで、レイテンシ削減などのメリットを活かした体感速度を上げると言った工夫が凝らされているが、この辺は拡張性とのバーターの部分でもあり、Appleだから実現できる製品という感もある。今年はM3 UltraとかM4とかが出てきそうであるが、まだ詳細は不明なままである。

メーカー/プロセッサシリーズ名開発コード名/搭載製品名発売日プロセッサ型番周波数(MHz)コア数PassMark v9GeekBench 6CineBench R23CineBench R24
RyzenSummit Ridge2017年3月Ryzen 7 1800X3,6008153895785
RyzenWhitehaven2017年8月Ryzen Threadripper 1950X3,40016217767461
RyzenPinnacle Ridge2018年4月Ryzen 7 2700X3,700814271611110135
RyzenColfax2018年8月Ryzen Threadripper 2950X3,50016251858335
RyzenMatisse2019年7月Ryzen 9 3900X3,8001231909994718576
RyzenMatisse2019年11月Ryzen 9 3950X3,50016356121065722670
RyzenCastle Peak2019年11月Ryzen Threadripper 3970X3,700324815014073
RyzenCastle Peak2020年2月Ryzen Threadripper 3990X2,9006454603141283453
RyzenVermeer2020年11月Ryzen 9 5950X3,4001612248257901494
AppleMacBook Pro 13inch 20202020年11月Apple M13,200/2,0644+412383509
CoreRocket Lake2021年3月Core i9-11900K3,50081097916149
CoreAlder Lake2021年10月Core i9-12900K3,200/2,4008+815417273161582
AppleMacBook Pro 14inch 20212021年10月Apple M1 Pro3,2306+212728803
AppleMacBook Pro 14inch 20212021年10月Apple M1 Max3230/2,0648+212778793
AppleMac Studio 20222022年3月Apple M1 Ultra3,230/2,06416+4188941624
RyzenRaphael2022年9月Ryzen 9 7950X4,5001619270366262185
CoreRaptor Lake2022年10月Core i9-13900K3,000/2,0008+1620104371952140
AppleMacBook Pro 13inch 20222022年11月Apple M23,200/2,0644+410136555
AppleMacBook Pro 14inch 20232023年1月Apple M2 Max3,504/2,4248+4148231050
AppleMacBook Pro 14inch 20232023年1月Apple M2 Pro3,504/2,4248+412540782
AppleMac Studio 20232023年6月Apple M2 Ultra3,504/2,42416+8214111918
CoreRaptor Lake Refresh2023年10月Core i9-14900K3,200/2,4008+1622797382352211
RyzenStorm Peak2023年11月Ryzrn Threadripper 7980X3,2006427331983225531
AppleMacBook Pro 14inch Nov 20232023年11月Apple M3 Max4,050/2,75012+4211271677
AppleMacBook Pro 14inch Nov 20232023年11月Apple M3 Pro4,050/2,7506+6153901045
AppleMacBook Pro 14inch Nov 20232023年11月Apple M34,050/2,7504+411770710

相対性能(グラフ)

 ということでざっくり1974年から2023年位まで、おおよそ50年弱の歴史を簡単にご紹介した。問題はこの性能をどう比較するかである。

 もともとの依頼の際に言われたのが「タイトルとしてはPS5はファミコンのCPUより1万倍高速とかそういう感じのですが」という話なのだが、当たり前だが「何をもって性能を比較するかの基準」がない。リスト1~9の末尾に、いくつかベンチマークの結果を示してあるが、そもそもすべてのCPUを網羅しているベンチマークが存在しないし、何をもって比較するかの基準もない。

 いろいろ悩んだのだが、とりあえず存在する複数のベンチマーク結果の相乗平均を取って、その数値を示すことにした。たとえばリスト1/2ならMOS 6502が基準で、あとはMIPS値ないしDhrystone v1.1の結果でリスト内の相対性能を算出。リスト間は基準同士の性能をやっぱりベンチマーク結果の相乗平均で算出するということにした。

PC向けCPUの相対性能の変遷

 結果として生成されたのが上のグラフである。基準はMOS 6502だが、これZ80にしてもそれほど差はないと思う。ほぼ指数関数的に増加……と言いたいところだが、やはり2010年台前半あたりからだんだんと性能の伸びが鈍化しつつあるのが分かる。時期で言えばリスト8の真ん中、要するにAMDがコケた後で、Intelも14nm/10nmのプロセスでコケてた時期で、このあたりから明らかに伸び具合が鈍化している。

 とはいえ、この50年あまりでおおよそ1億倍弱(7,000万倍ほど)、PC向けプロセッサは高速化したわけだ。

 ちなみに基準となる「MOS 6502 1MHz」というのは、要するに「Apple I」のことであり、この中で一番数字が高いのは先日発表されたAMDの「Ryzen Threadripper 7980X」で、計算上はMOS 6502 1MHzの6,769万倍の処理性能という計算になった。49年で6,769万倍だから、毎年1.445倍程度性能が向上している、という計算になる。

 ただこれが通用するのは先ほども書いたように2015年頃までであって、その先の伸びはもう少し鈍化している。2015年というとCore i7-6700Kあたりになるわけだが、これとRyzen Threadripper 7980Xの性能比は9.66倍ほど。8年で9.66倍だから、毎年1.33倍弱程度まで性能の伸びが鈍化している。

 この先はさらに伸びは鈍るのか(この公算は非常に高い)、あるいは何か革新的なものが出てきてまた性能が大きく伸びていくのか(こちらの公算はかなり低い)。個人的にはそろそろアーキテクチャを変革する時期な気がしなくもない。