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2016年には、タブレットがノートPCの出荷台数を上回る

~JEITAが「黒本」でIT/AV市場動向調査を発表

「黒本」と呼ばれる「2015年度AV&IT機器世界需要動向調査-先進国~新興国の製品別市場分析及び需要見通し-」

 業界団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)のCE部会は、「2015年度AV&IT機器世界需要動向調査-先進国~新興国の製品別市場分析及び需要見通し-」の内容を公表した。

 同調査は、今年(2016年)で26年目となるAVおよびIT機器に関する世界需要動向調査で、報告書は、その黒い表紙が特徴的であることから、通称で「黒本」呼ばれている。PCやタブレット端末、薄型TV、BD/DVD機器などの主要IT機器や、AV機器を対象に市場動向を調査。今年は、新たにカーエレクトロニクス機器についても調査を行なった。調査は、富士キメラ総研が協力している。

調査を担当した富士キメラ総研 第一研究開発部門の白川恭主任

 富士キメラ総研 第一研究開発部門の白川恭主任は、「世界経済動向は、2020年までは徐々に回復する見込みである。世界のAVおよびIT市場については、4K TVやカーオーディオなどが、おおむね各地域で成長。フラットパネルTVの成長が関連製品市場を活性化する方向にある。だが、BDやDVDは、ネット配信の広がりにより、マイナスになると予測されている」などとした。

 同調査によると、2015年におけるPCの出荷台数は、全世界で前年比5.5%減の3億1,300万台となり、そのうち日本は、17.7%減の1,265万台となった。

 ノートPCは、全世界で6.7%減の2億100万台、日本が15.1%減の940万台。デスクトップPCは、全世界が3.3%減の1億1,200万台、日本が24.4%減の325万台となった。

 「インターネット接続機器としての需要は大画面スマートフォンやタブレットに緩やかにシフトしていること、スマートデバイスとクラウドサービスを組み合わせた利用形態の広がりも、PC需要の減少に繋がる」としたほか、「PCは、短期的にはタブレット端末やスマートフォンの普及、PCの高機能化の進展に伴い、需要は縮小傾向が続く。だが、2017年以降も、買い換えサイクルによる需要増も見込め、ほぼ横ばいで推移する」とした。

 世界では、個人向けのスマートフォン、タブレット端末への需要シフトは緩やかに進行。法人向け需要は微増での推移が続き、全体としては横ばいとしたほか、国内では、個人向け需要が減少するものの、今後は、2013年、2014年のWindows XPのサポート終了に伴って、販売されたPCが買い換えサイクルに入ること、企業のIT設備投資拡大による法人を中心とした需要増が見込め、市場全体ではほぼ横ばいで推移する」と予測した。

世界全体の動向
市場見通し

 PCの出荷台数は、2020年に向けた年平均成長率が、全世界が0.1%増、日本で0.2%増となり、横ばいで推移すると見ている。2020年のPCの市場規模は世界が3億1,400万台、日本は1,275万台。そのうち、ノートPCは、全世界で0.8%増で推移し、2億900万台。日本では0.2%増で推移し、950万台。デスクトップPCは、全世界では1.3%減でマイナスで推移し、1億500万台に、日本では0.0%とし、325万台になると予測した。

 一方、タブレット端末の出荷台数は、全世界で前年比4.4%減の2億2,500万台、日本では5.9%増の886万台。そのうち、日本における個人向けタブレット端末は3.1%増の710万台、法人向けタブレット端末は19.0%増の176万台となった。

PC/タブレット端末の市場動向

 「タブレット端末は、6型を超える画面サイズのスマートフォンが登場したことで、低価格帯の端末でも平均画面サイズが拡大。だが、スマートフォンの影響で市場はほぼ横ばいになると見られている。サイズ別では、主流を占めてきた7型クラスの割合が減少する」などとした。

 2020年に向けては、全世界では平均成長率が0.4%減になると予測。2020年には2億2,000万台の出荷を予測。日本では、7.1%増で推移すると予測し、1,250万台になるとした。日本では、個人向けタブレット端末は2.4%増の成長率に留まり、2020年は800万台が見込まれるが、法人向けタブレット端末は、年平均20.7%増での成長が見込まれ、2020年には450万台が見込まれるという。

 「世界市場では、スマートフォンが市場全体として大画面化が進展しており、タブレット端末の需要が奪われはじめている。今後はスマートフォンに移行していく部分を法人向けの需要増や新興国地域の需要増で補うことで、市場全体が横ばいで推移するだろう。日本においては、個人需要は廉価なSIMロックフリータブレットや、MVNOキャリアからの低価格端末の投入により、堅調に推移。法人需要は、文教向けタブレット端末市場の伸びに期待が集まる。大画面化や法人市場の拡大に活路を見いだすことができるかが注目される」とした。

 国内のタブレット市場に関しては、プラス要素として、「教育の情報化ビジョン」の実現に向けた需要増が期待されるという。ここでは、2017年度末までに生徒全体の3分の1、2020年度には1人1台の整備が計画されており、3年間で1,000万台の需要が見込まれることが期待されている。一方で、マイナス要素としては、スマートフォンと比べて買い換えサイクルが長期化し、3年以上となっていること、高年齢層へのタブレット端末への普及も、買い換えサイクルの長期化につながるとした。

 今回の調査によると、2016年における、国内のタブレット端末の出荷台数は前年比7%増の949万台となり、これに対してノートPCの国内出荷台数は0.5%減の935万台となる。ノートPCの出荷台数を、タブレット端末の出荷台数が初めて上回ることになる。

 また、2020年における国内のタブレット端末の出荷台数は1,250万台となり、PC全体の1,275万台に匹敵することになる。

 一方、フラットパネルTVは、スポーツイベントによる市場の活性化、新興国地域への伸張により、市場が増加傾向にあることに加えて、今後は4Kなどの新機能や、上位モデルへの買い換えが活性化。2020年に向けて、全世界で年率3.2%増になると見ている。

 「日本では、4K放送の開始ともに過去の特需期に購入した機器の買い換え需要が活性化する」と予測した。

 中でも4K TVの成長率が高く、2020年までの平均成長率は29.2%に達すると予測。富士キメラ総研の予測では、2020年には4K TVの構成比が31.9%になるとしている。

 日本における4K TV化は、「世界的にも高い比率になると予測できる。2015年の4K化率は12.3%であったが、2020年には70.5%にまで拡大することになる」と語った。

 放送と通信を連携した対応TVでは、2020年までに22.0%増の成長率となるとしており、「HAEにより家電連携が加速。コンテンツ環境の整備により、放送と通信連携対応への需要が促進される。日本ではこの領域でも4K化が進むことになる」という。

 一方で、記録再生機器は、全体的に減少傾向にあり、レコーダーは、2020年までに1.7%減、プレーヤーは3.5%減になると見ている。「ネット配信の広がりや多チャンネル化、動画共有サービスなどのパッケージ以外のコンテンツの流通拡大、録画対応TVの登場、HDD内蔵セットトップボックスなどのレコーダー以外の録画機器の拡大が影響している。だが、中国ではUSBメモリでの映像コンテンツ流通が多く、地方都市での高速インターネットの未整備により、BDプレーヤーの需要拡大に寄与することになる。BDは、新興国での需要増大が期待できる」と分析した。

 なお、今回新たな調査対象となったカーエレクトロニクス機器では、カーナヒゲーションシステムは微減、カーオーディオは微増とし、全体では横ばいから微増で推移していくと予測。「自動車の電装化の進展によるモニターニーズの増加が見込まれるほか、KT法など自動車へのモニターニーズの増加や、車内エンターテイメント情報の充実がプラス要素となるが、新興国を中心とした景況の悪化を理由とした自動車販売の冷え込みや、スマートフォンの普及による家内などの増加などが見込まれる」という。

 カーナビゲーションシステムは、2020年は、年平均1.2%減で推移。カーオーディオは、年平均0.9%増で推移するという。

(大河原 克行)