生き残りから成長へ――Apple再生への5つのステップ
米Apple副社長Phill Schiller氏基調講演

Phill Shiller 開催日時:10月2日13:00~14:00
会場:幕張メッセ 国際会議場


 WORLD PC EXPO98開催3日目にあたる10月2日、米Apple Computerのマーケティング担当副社長、Phill Schiller氏の基調講演が行なわれた。
 経営戦略など講演内容は、ほぼ7月のMACWORLD Expo/New Yorkでの基調講演の焼き直しといってよい。しかし講演はデモも交えてわかりやすくまとまっており、本邦初公開のMac OS 8.5の機能紹介とデモに多くの時間が割かれたため、多くの受講者にとって満足できる内容だったと思われる。
 とくに、Mac OS 8.5日本語版は正式発表もされていないため、会場にいたユーザーは初のMac OS 8.5日本語版公開デモを見たことになる。ただし、Mac OS 8.5が国内未発表のためか、写真撮影は講演開始後5分までと制限されたために、講演中のデモ画面などはここでご紹介することはできない。



 Phill Shiller氏は、暫定CEOのJobs氏就任から近い将来までを、Apple再生までの5つのステップとして示し、それに沿って話を進めた。すでにMACWORLD Expo/New Yorkの基調講演レポートで概要はお伝えしているが、Schiller氏の話の順に沿って、ざっと内容をご紹介していく。

(1) Survival
 まずは生き残りが目標で、投資事業を絞り収益を確保した。これによりAppleは3期連続での黒字を計上、キャッシュフローも良くなり、株価もiMac発売時期を頂点として30ドル台を保っている。インターネットを利用した直販システム、AppleStoreも成功を収めた。

(2) Product Strategy
 製品戦略としては、製品群を4つのカテゴリーに分け、プロフェッショナルやパワーユーザー向けの製品から発売した。最初にデスクトップ製品、Power Macintosh G3を発売。G3プロセッサの高いパフォーマンスとリーズナブルな価格設定で、これまでに125万台を販売した。次にPowerBook G3を発売。Schiller氏は「ここ数年PowerBookのデザインがおかしくなってきたのを、新たにデザインしなおした」と述べ、また価格については「14インチTFTで2,799ドルからという値段はいいところだと思う」とした。

 コンシューマー向けとして発表されたiMacのコンセプトは「The excitement of Macintosh. The simplicity of Internet」と紹介された。初心者が購入するのに型番などを気にする必要のないよう、モデルはひとつだけにしたという。製品について述べる際には必ずプロセッサのベンチマーク結果を示し、Pentium IIをはじめとしたIntelのCPUに対する優位を強調。iMacについてはCeleron 333MHzを搭載したWintel機とのムービー再生速度を比較するデモを披露した。デモの結果は圧倒的にiMac(G3 233)が速かったが、面白かったのはむしろデモに使ったムービーの内容。IntelのBunny Peopleをディスプレイに表示したWintelノート機を、ブルドーザーがばりばり踏みつぶしていく。「Think different」キャンペーンの企業イメージCFとはうって変わって、G3プロセッサの性能や具体的な製品をアピールする際の最近のAppleは、かなり表現が攻撃的かつ直接的だ。
 '99年にリリースを予定しているコンシューマー向けノート機については「これについてはいまはお話できない」と触れるのを避けたが、ノート製品では、DVDドライブ内蔵のPowerBook G3でDVDを再生するデモを行ない、「日本ではまだ発売していないが、来年早々に日本でもDVD内蔵モデルをリリースする」と述べた(これは、Mac OS 8.5日本語版でのデモを除けば、この基調講演でほとんど唯一の新しい情報だ)。

(3) Mac OS
 米国ではすでにMac OS 8.5は10月17日発売という報道も流れており、今回の基調講演はリリースも近いと思われるMac OS 8.5の紹介がメイン。デモも交え、30分近くの時間が割かれた。新しい検索機能「Sherlock」は、ローカルディスクからWeb上の情報までをシームレスに検索するツールで、自然な言葉で検索できるのがセールスポイント。Schiller氏は「自分専用のシャーロック・ホームズを持っているようなもの」とその使い勝手をアピールした。デモには日本語版が使われ、「シャーロック・ホームズって誰?」、「免許の更新はいつからできるのか」など、ふだん使う自然な言葉で検索ができることを示した。検索結果はドラッグ&ドロップで“インターネットエイリアス”ファイルにすることもできる。
 またAppleは、Japanese Language Kitなど、英語版OSで各国語を使うためのLanguage Kitをこれまでに発売しているが、その技術を使って、Mac OS 8.5では特別なソフトなしで、Webブラウザなどで各国語が表示できるようになった。これまで文字化け状態でしか見られなかったハングルや中国語、ウムラウトを使うヨーロッパ言語などがきちんと表示できるという。

 このほか、Mac OS 8.5ではイーサネットを使ったコピーが高速であること(100Base-TXでの150MBのファイルのコピーがNTでは25秒、Mac OS 8.5では12秒であるという)、新しいColorSync、Photoshopの作業もスクリプト化できるようになり、HTML作成、カタログ作成などクリエイティブワークに実用的に使えるようになったAppleScriptなどの新機能をデモを交えて紹介。8.5へのアップグレードは「必須(Must Have)」のアップグレードであると強調した。

(4) Applications
 5月6日のiMac披露の日から147日で、1,000以上のアプリケーションが発表された。アートワーク用やDTPソフトなどはもちろん、教育用ソフトやゲームなど、家庭向けのソフトも充実したとアピール。

(5) Growth
 Schiller氏はアップルのユニークな資産として、「ブランド」、「インストールベース(2,200万人以上の現役ユーザー)」、「デザイン」、「使いやすさ」を挙げ、こうした資産を活かした製品作りをしていくと述べた。最後に「Appleは再び成功の道に戻った。生き残りから成長へ、Appleは業界でのリーダーシップを取り戻す」として、講演を締めくくった。

□WORLD PC EXPO98ホームページ
http://wpc98.nikkeibp.co.jp/
□関連記事
【7月9日】MACWORLD Expo/New York基調講演レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980709/mwny98_3.htm

('98年10月5日)

[Reported by hiroe@impress.co.jp]


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