プロカメラマン山田久美夫の

フォトキナ初日レポート
「プリンタ内蔵デジカメ、フィルム型デジタルアダプタ」



看板
 いよいよ世界最大のカメラショーである「フォトキナ」が開幕した。この「フォトキナ」というイベントは、ドイツのケルンで2年に1度開催される、世界最大のカメラショーであり、カメラやレンズ、フィルムはもちろん、周辺アクセサリから業務用機器までを広く網羅した巨大イベントだ。会場もかなり大きく、会場内を横断するだけで、20分は楽にかかる。ブース間の移動は、会場内を巡回するシャトルバスを利用するほどで、日本のカメラショーに比べると、展示面積で約100倍(!)もの違いがある。コダック、アグフア、富士フイルムといったフィルムメーカーはそれぞれ、幕張メッセの1ホールを1社で使うほどの巨大なブースを構えており、日本のイベントとはケタ違いのスケールといえる。


会場
 このクラスのイベントは、その時代の趨勢が明確に現れるものであり、とくにフォトキナは2年に1度の開催であることもあって、それが顕著にみられる。今回の特徴は、やはりデジタル・イメージング関係の出展が大幅に増えたこと。大手メーカーはデジタルカメラをはじめとしたデジタル関連機器を強くアピールしているのが印象的だ。もちろん、メインはあくまでも市場の大半を占める銀塩カメラ(フィルム式カメラ)関係であること変わりはない。しかし、ようやくヨーロッパでもデジタルカメラやデジタルプリントが認知されこともあり、銀塩関係の新製品が例年に比べて減り、各社とも21世紀を担うデジタル機器に力をそそぎ、アピールしている。


会場
 もっとも、会場内でデジタルカメラを持っている人は、意外なほど少なく、ときおり見かけても、プレス関係者か、日本メーカー関係者であり、日本のPC系イベントなどに比べると、だいぶ立ち遅れている感じがするのも確かだ。

 では、今回のフォトキナレポート第二弾では、フォトキナで初公開された主だった新製品や参考出品モデルについてレポートしよう。



●富士フイルム:世界初のプリンタ内蔵デジタルカメラと携帯型プリンタ

スペックシート
 富士フイルムは、前日レポートで第1報をお届けしたプリンタ内蔵デジタルカメラを参考出品した。このモデルは、あくまでもプロトタイプ。しかし、来年中頃には実際に製品として発売されるという。

 今回の出品モデルは、35万画素のデジタルカメラに、同社のインスタントプリントシステムである「フォトラマ」を組み合わせたもの。ただし、製品版ではメガピクセルモデルになると予告されていることからも、開発を開始したというデモストレーション的な意味合いが強い。


実演
 カメラ機能としては、単焦点レンズのマニュアルフォーカス式で、記録媒体はスマートメディアを採用と、それ自体は何の新鮮さもなく。やはり注目されるのはプリンタを内蔵した部分といえる。このプリンタ部分には、同社が新しいシリーズとして発表した、「INSTAX」と呼ばれる名刺大のフォトラマプリントを採用している。これはもともと、インスタントカメラ(一般にはポラロイドと呼ばれている種類のもの)用の感光材料であり、方式としては光を当てて、画像を生成するタイプだ。そのため、本機では蛍光灯光源を使ったラインセンサー風の露光部分を内蔵。そこでデジタルデータを光に変換し、移動式のミラーを使って感材の前面を走査しながら露光していくという、なかなか凝った構造になっている。しかし、RGBをそれぞれ別に、合計3回露光するため、プリント時間は2分程度かかるという。


印刷サンプル
印刷サンプル
 ブースでは、イメージサンプルとして、このカメラに内蔵されるプリンタと同じエンジンを使ってプリントしたサンプルが展示されていた。それを見る限り、プリントのクォリティは上々。ふつうのインスタントカメラで撮影したものと比較しても、画質的にはなんら遜色のないレベルだ。とくに、色や階調の再現性はいかにも写真的な滑らかさを備えており、好感が持てた。


 もっとも、プリンタを内蔵することで、カメラボディは109×55×143mm(幅×奥行き×高さ)と普通のデジタルカメラに比べるとかなり大型で、重量も610gとなっている。しかし、名刺大のプリントができるプリンタを内蔵していることを考えると、納得できるレベルともいえる。なお、電源はLR6型アルカリ電池となっている。

 まったく新しい分野の製品であり、デジタルカメラで撮影して、その場でプリントもできるし、スマートメディアにどんどん記録しておいて、時間のあいたときにプリントすることもできるので、従来のインスタントカメラよりも便利。もちろん、普通のデジタルカメラとしても使える上、スマートメディアにPCにある画像データを記録すれば、このカメラをプリンタとしても使うこともでき、かなり利用範囲が広いモデルといえそうだ。

DIGITAL IN-PRINTER CAMERA
DIGITAL IN-PRINTER CAMERA
DIGITAL IN-PRINTER CAMERA背面

DIGITAL IN-PRINTER CAMERA開いたところ
DIGITAL IN-PRINTER CAMERA開いたところ

Digital Instax Mini Printer
 また、このプリンタ部分だけを独立させた「Digital Instax Mini Printer」も同時発表されている。こちらは、スマートメディアからのプリントはもちろん、IrDAやパラレル経由でのプリントにも対応しており、サイズも95×166×58mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクトで、重さも560gと意外に軽量な携帯型プリンタ。感光材料の感度がISO800相当と高感度なので、消費電力も意外なほど少なく、電源はカメラ用のCR123Aリチウム電池を採用している。

 大きさも携帯性できるレベルで、写真クォリティーが実現できるモデルとして、大いに魅力的な存在といえる。


 いずれの製品も、価格は未定だが、ブースでの説明によると、ペーパーのコストは50~60円程度、プリンターは2万円程度に抑えたいという強い希望があるそうだ。

 発売は来年半ばということなので、まだ先ではあるが、大いに期待したい。

□富士フイルムのフォトキナ関連ページ
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj385s.html


●IMAGEK:ついに姿を現したフィルムカートリッジ型デジタルアダプタ

スペックシート
 今春、アメリカで開催されたカメラショー「PMA」でリリースのみが配布された、幻の35mm版サイズCMOS採用デジタルアダプタ「IMAGEK EFS-1」がついにその姿を現した。

 とはいっても、今回もまだプロトタイプであり、まだ35mmフィルムサイズ(36×24mm)のセンサーが完成していないということで、2/3インチのCMOSをセットした状態での出品となった。しかし、前回は実物がなく写真と資料のみだったので、これで完全な幻ではないことが証明されたわけだ。

カメラに装着しているところ
 このアダプタは、写真でわかるように、ごく普通の35mmカメラに、フィルムと同じように装着し、デジタル画像が撮影できるという、かなりユニークで実用的なもの。これさえあれば、わざわざデジタルカメラを購入しなくても、手持ちのカメラがデジタルカメラに早変わりするわけだ。さらに、アダプタを装着することで、PCカードスロットやケーブルでのデータ転送もできるので、PCにも簡単にデータを取り込むことができる。


質問に答える係員
 しかし、機能的に考えて、疑問点も多く、本当に実現できるのかどうか不安な面もある。これは来場者がみな共通して抱くところで、ブースでは2人の説明員が、休む時間もなく、対応に追われていた。


パトローネ部の電池
 そこで得られた情報を総合すると、まず、撮像素子は製品版では予告通り、35mmフィルムとほぼ同等のサイズのCMOSセンサーを搭載。さらに画素数も当初は130万画素から始まるが、その後、200万画素クラスのモデルが登場し、こちらがメインになるという。電源は写真でもわかるように、パトローネ部分に納められており、その周辺に40MBものメモリが搭載されているという。また、カメラ側との連動機能はなく、シャッターが開くと、それをセンサーが感知して、撮影が始まるという。当初は高速な連写はできないが、2秒間隔で撮影することができる。画像の記録は可逆圧縮方式で30枚の記録が可能。また、カメラの裏蓋にあるフィルムの種別確認用の窓から見える位置に、液晶表示を備えており、そこから撮影した枚数などのインフォメーションを見られるようにするという。

 現在の問題点は、CMOS部分が厚いため、カメラに納めるときに、カメラ側の裏蓋(プレッシャープレート)に負担がかかることで、この部分は製品版では最低でも1.3mm、理想的には1mm程度まで薄くする予定という。

 発売は、米国が一番早く、来年の2月を予定。日本は来年の年末になりそう。価格は1,000ドル以下。遅くとも、来年2月のPMAまでにはワーキングサンプルを出展できるという。

 こうして話を聞いてみると、実によく、細部まで考えられており、本当に存在し製品化される可能性がきわめて高いことを理解できたのが、私にとっては一番の収穫だった。

 しかし、本当にこんなデジタルアダプタが登場したら、たとえ1,000ドルでも、十分の価値のある製品になると思われる。とくに、一眼レフのように、高価なレンズを含めた35mmシステムをすでに持っている人にとっては、きわめて魅力的なもの。同社としてもそのような高い要求に耐えるモデルの構想もあるというから、結構期待できそうだ。来年の発売が大いに楽しみなモデルといえる。

撮像素子 カメラに装着しているところ IMAGEK EFS-1

□IMAGEKのホームページ(英文)
http://www.imagek.com/


●サンヨー、リコー、ローライもニューモデルを発表!

 このほかにも、三洋は同社初の130万画素3倍ズームモデルを初公開。リコーはDC-4をベースに3倍ズームのまま液晶を変更して低価格化をはかった「RDC-4200」を出品。さらに、海外勢ではローライが140万画素3倍ズーム搭載機を参考出品。アルパはなんと、35mmフィルムサイズの600万画素CCDを採用したデジタルバックを出品するなど、かなり激しい展開を見せている。これらについては、追ってレポートする。

【三洋】
三洋 三洋 三洋

【リコー】
リコー リコー

【ローライ】
ローライ ローライ


【アルパ】
アルパ アルパ

□フォトキナのホームページ(英文)
http://www.icia.org/photokina/photokina.html
□関連記事
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm

('98年9月18日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp