【リレー連載 物欲道修行記】


リレー連載 物欲道修行記

第45講 テレコム道 家元:法林岳之

 法林家元はご本人も大柄なのだが、ケースもフルタワーをお使いとのことである。業界人でデスクトップ型のケースを使っている人というのは非常に少ないのだが、たいていはミディアムタワー。というのはミディアムタワーなら机の下に入るからなのだ。フルタワーは米国の事務机は日本のより天板が10cm高いから米国ならちょうどという説もあるが、ともかく日本じゃ入らないのだ。ひとりあたりのスペースが決まっている会社だとタワーを机の上に置くか下に入れられるかはかなり大きい問題である。でも、とくにATの人はなんでもかんでも本体に入れたがる傾向があるから、ディスクがたくさん入るのはやっぱりいいですね。
(はじめて見たフルタワーはGATEWAY2000の横置き型。そのデカさがいまも忘れられない編集担当)

男は黙ってフルタワー

WB7890A Logo

ボーナスがうらやましいぜ

 数日前、久しぶりに秋葉原へ出かけた。ボーナスが出た直後ということもあり、秋葉原はどこも人、ひと、ヒト……。ショップでCPUやメモリの値段を見ている人たちからは物欲オーラが発せられているようだった。

 売る方も気合いが入ってるようで、お客さんに熱心に説明するシーンを何度も見かけた。ただ、忙しいと対応が極端に悪くなる店もあるようで、T-ZONEミナミでは手書きの領収書を頼んだところ、かなり横柄に断わられてしまった。専用カウンターまで設置して応対している店があるのに、繰り返し頼んだだけで「ったく、しょうがねぇなぁ。じゃあ切ってやるよ」とまで言われる始末。あまりにも頭に来たんで、そのまま店を出てきちゃった。どんなに忙しいにしろ、大型店で領収書を出し渋るのは、営業的にもマイナスだと思うんだけど。

 そんなわけで、ボーナスで盛り上がりまくってる秋葉原だけど、こちとらこんな商売をしてるもんだから、もう10年ほど、ボーナスという言葉とは無縁。この時期になると、いつもサラリーマンの人たちがうらやましくなる。ただ、性格が乗せられやすいためか、何となくワクワクしてしまうのが悲しいところ。寂しいから、編集部が筆者陣に盛大にご馳走でもしてくれないでしょうか(笑)。



フルタワーこそAT互換機

 さて、今回のお題はAT互換機のケースだ。最近、異様なまでに自作ブームが盛り上がってるけど、なかなかケースまで手が回らないというのが実状のようだ。AT互換機のケースはそのサイズや形状からデスクトップミニタワーミッドタワーフルタワーなどがある。これらの内、個人的にはフルタワーが最も気に入っている。主な理由としては、以下の3つが挙げられる。

  1. 内部が広いので、作業がしやすい
  2. ドライブなどがたくさん内蔵できる
  3. 机の横に置けば、マウス台にもなる
 (1)は周辺機器や拡張カード類の入れ替えが激しい商売柄というのもあるけど、ボクの手が大きすぎてミニタワーだと入らないというのもある(笑)。(2)の内蔵できるということは、外部に周辺機器を増設しなくても済むため、電源を別に確保しなくてもいいというメリットもある。ただし、本体の電源部を強力なものにしておかないと困るけどね。(3)はフルタワーの盲点。よく「フルタワーなんてアメリカの発想なんだよね。デカ過ぎて、日本じゃ使い物にならない」なんて話を聞くけど、周辺機器を内蔵して、机の横に並べてしまえば、実はとっても省スペースになる。その上、マウス台としても使えるんだから一石二鳥というわけ。

 でも、そんなことより、フルタワーのマシンって男らしいというか、存在感バツグンなところがいいよね。。なんかオレのマシンはコレだぁって感じがするでしょ。え、しない?


横開きケースは便利だ

 ただ、フルタワーケースにも難点がある。ケースそのものが大きいため、カバーも大きくなってしまうという点だ。内部の作業をするときには、背面のネジを外し、上部のカバーを上に持ち上げて取り外さなければならない。いくら身長が高いボクでもこれは疲れる。

 ところが、世の中には便利なものがあるもので、サイドのパネルだけが外れるケースが存在する。ボクがはじめて、サイドパネルが外れるケースを見たのはもう4年ほど前。ある雑誌の創刊に合わせ、秋葉原のショップに注文したAT互換機に採用されていた。その後、そのショップはなくなってしまったため、ケースのみを入手できなくなっていた。

 しばらくすると、他のショップで同じようにサイドパネルが外れるタイプのケースを見つけ、それを使っていたのだが、前述のケースの使い勝手が忘れることができず、どこかのショップで扱っていないかと情報収集を続けていた。

GT-300XC
【SHIN-G Tech GT300XC】
GT-300 Open
【サイドパネルを開けたところ】

 その後の調べで、このケースは台湾のSHIN-G TECH Internationalというメーカーが製造するGT-300XCという製品であることがわかり、2年半ほど前に通信販売で無事に購入することができた。価格は25,000円程度だったが、十分それに見合うだけの価値のあるケースだった。余談だが、当時、いっしょに一ヶ谷氏もこのケースを購入した。

ドライブベイ
【ベイには板バネ付きレールで固定】

 このケースが優れているのは、ただ単にパネルが外れるだけではない。前面パネルを外せば、両サイドのパネルがそのままの状態で開くのだ。しかも前面には大きなファンを備え、前面パネルには立派なフィルタもついている。

 また、意外に便利なのが内蔵ドライブを専用のレールで固定している点だ。「専用レールなんて不便じゃん」と考えるかもしれないが、ドライブの取り外しがしやすいというメリットがある。しかも板バネで本体に固定されている(というより、押え付けている)ため、前面パネルを外せば、あとは板バネを押さえながら手前に引くだけで内蔵ドライブが取り出せるわけだ。

 ちなみに、ベイは5インチベイが7つあり、その内3つがシャドウベイとなっている。現在、秋葉原ではBuilt-upなどが取り扱っており、3.5インチベイを備えた後継モデルのGT-321ECなどもいっしょに販売されている。



でも、買い換えちゃったのよ

W&B 7890A
【W&B 7890A】
W&B 7890A前面
【W&B 7890A前面】

 何の不満もなく、GT-300XCを使い続けていたのだが、ひょんなことからケースを買い換えることになってしまった。最大の理由はGT-300XCのシャドウベイ部分が新しく購入したマザーボードに取り付けたメモリと干渉してしまうからだ。

 BabyATサイズのマザーボードでは、キーボード端子の横にSIMMスロット(もしくはDIMMスロット)並んでいる。ところが、今回購入したTYANTitan TurboはSIMMスロットが6つもあるもんだから、どうしてもシャドウベイに干渉してしまうのだ。シャドウベイを使わないという方法もあるのだが、内蔵するドライブが多いボクの環境ではちょっと難しい。結局、諦めて、新しいケースを購入することにしたわけだ。

 今回購入したのはA Masterで販売されているW&B 7890Aというケースだ。当初は、前述の後継モデルを買うことも検討したんだけど、そろそろ違うケースも試してみたいと考え、この製品を選んだ。すでに、アキバHotLine!でも取り上げられたことがあるから、知ってる人も多いだろうけど、簡単に特徴を紹介しておこう。

ドライブベイ
【ベイにはレールをネジで固定】

 まず、サイドパネルはGT-300XCと同じように、前面パネルを取り外すだけで、左右にそのまま開く。ドライブベイは5インチが8つ3.5インチが3つあり、その内、5インチの1つ、3.5インチの2つがシャドウベイになっている。ベイへの固定はネジとなっているが、気にならなければ、仮止めのままでも大丈夫そうだ。

 また、面白いのがマザーボードにカード類を挿したまま、ユニットを取り外せるようになっている点だ。サイドパネルを取り外し、ケーブル類を抜き、ネジを2つほど外せば、いとも簡単にマザーボードを載せたユニットだけが取り外せるのだ。

 ちなみに、マザーボードはBabyATとATXの両方に対応し、電源は別売となっている。BabyATとATXの切り換えは背面パネルを交換できるようにしたことで実現している。今後、マザーボードをATXに買い換えたときもそのまま移行できるわけだ。

 ファンは標準で1つだけ前面についているのだが、前面にさらに1個、ドライブベイの左右に2個ずつ、背面にも1個の合計7個が装着できる構造になっている。発熱の多いドライブなどを利用する人には安心の構造だ。

 価格は25,000円(BabyAT専用タイプは18,800円)で、電源ユニットが1万円、キャスターもいっしょに購入したので、合計39,600円となった。ケースとしてはかなり高価なものになってしまったが、スペックや機能を考えれば、納得できる範囲だ。

 購入してまだ2日目のため、使い心地は何とも言えないが、GT-300XCに十分匹敵する機能を持っていると言えそうだ。特に、マザーボードの取り外しについてはかなり便利で、非常にラクに作業ができた。いや、空きベイにあれこれ内蔵してみるのも楽しいかもしれない。あと3つは内蔵できるもんな(笑)。



リムーバブルユニットはどう選ぶ?

Hard Disk Mobile Rack
【Hard Disk Mobile Rack】
ラック内部
【ラック内部】

 さて、話を次に移そう。これまた、ボクのような商売をしていると、複数の環境を試さなきゃいけないことがある。PC-98シリーズなら固定ディスク起動メニューで別のパーティションから起動できるため、簡単に環境を切り換えられるんだけど、AT互換機は市販のユーティリティを利用しなければ、環境の切り換えは難しい。

Prolinea5133に取り付け
【Prolinea5133に装着】

 そこで利用するのがいわゆるハードディスクのリムーバブルユニットだ。3.5インチのハードディスクを専用のユニットに収め、ベイにはユニットの受けになる部分を内蔵しておく。あとは、内部ユニットを着脱するだけで環境の切り換えができるという代物だ。

 ところが、このリムーバブルユニットには思わぬ落し穴がある。市販のユニットには当然のことながら互換性がなく、同じメーカーでも内部ユニットに互換性が保たれていないことがあるのだ。現に、DOS/V PowerReport編集部では、利用していたリムーバブルユニットの内部ユニットのみを買い足そうとしたところ、すでにモデルチェンジしており、同じタイプは入手不可能となっていたことがある。最初にベイの数だけ買っておけばいいという説もあるんだけど、ベイの数以上に環境が必要なことも考えられるわけで、根本的な解決にはならない。

キー部分
【キー部分】

 何かいい対策はないかと調べてみたところ、なかなか良さそうなリムーバブルユニットを見つけることができた。この製品はグロリアシステムズが販売しているもので、もう何年も内部ユニットの型を変えていないのが特徴だ。グロリアシステムと言えば、AT互換機ショップの老舗であるとともに豊富なケースを取り揃えていることでも知られている。

 ボクはテストマシンとして使っているCOMPAQProlinea 5133に装着するためにこの製品を購入し、内部ユニットもすで3つ揃えている。

 使い勝手はなかなか良好で、カギを差してひねると、把っ手の部分(というより、ユニットの前面のほとんど)が飛び出す構造になっている。あとは把っ手を手前に引っ張るだけだ。内部ユニットのフタの取り外しがちょっと面倒なんだけど、とにかく型が変わらない安心感は大きい。

 価格はベイ側と内部ユニットがひとつになった基本セットが4000円、増設用の内部ユニットが2500円となっている。SCSI用とIDEが用意されているので、購入するときには間違えないようにしよう。


[Text by 法林岳之]



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