VIA Technology Forum 2001レポート

2002年の第1四半期にP4X333/P4M333でDDR SDRAMサポート

VIA Technologies ストラテジックプロダクトマーケティングディレクターのエリック・チャン氏
会期:9月4~5日(現地時間)

会場:TICC(Taipei International Convention Center)

 VIA Technologiesが同社製品の開発者向けに開催しているVIA Technology Forum(VTF)は同社製品のロードマップなどを解説する機会としても利用されている。同社のチップセット事業の戦略を立てるストラテジックプロダクトマーケティングディレクターのエリック・チャン氏は、同社のチップセット戦略を説明するセッションにおいて、同社のチップセットに関する戦略を説明した。

 また、先日SiSは日本においてPentium 4をサポートしたチップセットであるSiS645のプレスカンファレンスを行なったが、SiSも今後SiS645の統合チップセット版SiS650を計画しているなど、SiSとVIAによるサードパーティ同士の争いも今後激しいことになりそうだ。

 本レポートでは、情報筋により明らかになった事実もまじえて両社のロードマップを紹介しよう。


●333MHzのDDR SDRAM対応Pentium 4チップセット「P4X333/P4M333」

 図1、図2はVTFで公開された内容、および情報筋からの情報を基にまとめたVIA Technologies、SiSのIntel向け、AMD向けの推定チップセットロードマップだ。VIA Technologiesは既にP4X266をリリースしており、まもなくOEMベンダへの出荷を開始するステージにある。既に各マザーボードベンダはデザインを終えており、VIAからチップセットを入手でき次第出荷できる段階にある。このP4X266の統合化バージョンが、VTFの基調講演レポートでもお伝えしたようにP4M266だ。

VIA、SiSの推定ロードマップ
図1:Intel CPU用 図2:AMD CPU用

 P4M266に内蔵されているのはVIAの子会社であるS3 GraphicsのSavage4で、3Dレンダリングエンジンは1パイプラインで1クロックあたり1テクスチャとなっている。ローカルのフレームバッファは持たず、メインメモリの一部をフレームバッファとして利用する構造だ。

 従来のVIAの統合型チップセット(PM133やKM133)では、メインメモリにSDRAMを利用していたのが、このP4M266では、DDR SDRAMを利用するため、「PM133に比べ、40%程度の3D描画性能の向上を期待できる」(チャン氏)ということだ。

P4M266を説明するスライド P4X266、Intel 850、Intel 845の性能差を説明するスライド

 P4M266のように、メインメモリの一部をフレームバッファとして利用する場合、メインメモリの帯域幅が内蔵グラフィックスの性能に大きく影響する。DDR SDRAM(2.1GB/sec、266MHz)はSDRAM(1.06GB/sec、133MHz)の倍の帯域幅があり、内蔵グラフィックスが本来持つ性能を発揮できるようになるのだ。

 P4M266はP4X266とピン互換になっており、マザーボードメーカーはP4M266とP4X266を同じPCBで作ることができる。マザーボードメーカーはPCBを2種類作る必要がないので、P4M266マザーボードをローコストで生産できる。

 「P4X266とP4M266を搭載したシステムでは、システム価格で200~400ドル(筆者注:日本円で約2万5千円から4万8千円程度)の違いが出てくる」(チャン氏)と、P4M266はOEMメーカーにとって魅力的なソリューションであると強調した。

 このP4M266以降の計画だが、チャン氏は「2002年には333MHzのDDR SDRAMをサポートしたチップセットを導入する」としている。情報筋によれば、VIAはOEMメーカーに対して、P4X266の後継となるPC2700をサポートするのがP4X333であると説明しており、その統合型バージョンがP4M333であるという。

 P4X333、P4M333は16bit幅のV-Linkをサポートし、ノース-サウスブリッジ間の帯域幅は533MB/secになるという。P4M333に内蔵されるグラフィックスコアは、同社がZoetrope(ゾートロープ)のコードネーム、またはUltraSavageの製品名で呼ぶSuperSavageの後継コアが内蔵されることになる。

 Zoetropeでは、3Dレンダリングエンジンが、2つのパイプライン、1クロックあたり2テクスチャという仕様になり、1クロックあたりに4テクスチャを描画することが可能になる。

 このため、3D描画能力は、Savage4と比べて飛躍的に高まる可能性が高い。VIAはこのP4X333を今年の終わりまでにエンジニアリングサンプルを出荷し、2002年の第1四半期には出荷するという計画を立てている。P4M333の方は、1四半期遅れ、2002年の第1四半期にサンプル出荷、第2四半期に大量出荷という予定を立てている。


●SiSはSiS645にSiS315を統合したSiS650を計画

 SiSは既にPentium 4用チップセットのSiS645を発表している。情報筋によれば、現在SiS645はマザーボードベンダによる評価ステージにあるという。各マザーボードベンダはSiS645のサンプルを入手し、デザインを開始している段階にある。

 実際に、日本における発表会でも展示されたのはSiSによるリファレンスマザーボードであり、マザーボードベンダによるリアルサンプルは展示されていなかった。通常、マザーボードベンダがリアルサンプルを持っている段階では、マザーボードベンダが展示を行なうのが通例だが、それがないところを見ると、実際にはその準備ができていない、つまりマザーボードメーカーの準備は整っていないと考えるのが妥当だろう。

 SiSはSiS645の統合版も用意しており、それが図1に示したSiS650だ。SiS650は、SiS独自のビデオチップであるSiS315を内蔵しており、P4X266とP4M266と同じように、SiS645とSiS650もピン互換となっている。

 SiS315は、2パイプラインで、1クロックあたり2テクスチャ描画可能なレンダリングエンジンとハードウェアT&Lエンジンを備え、GeForce2 MXに匹敵するような高い描画性能を持っている(AKIBA PC Hotline! Hothotレビュー参照 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010831/hotrev124.htm )。しかも価格が安いという非常にコストパフォーマンスに優れたグラフィックスコアとなっている。これが統合されるわけだから、SiS650の3D描画性能も十分期待できるものになるだろう。

 SiS650では、SiS630S/730Sなどと同じように、SiS301というコンパニオンチップが利用可能で、これを利用することでセカンドCRT、デジタル液晶ディスプレイ、テレビなどを接続できる。なお、SiS315が内蔵されているほかは、SiS645とほぼ同じスペックとなっている。SiS650は9月の半ばにエンジニアリングサンプルが配布されはじめ、SiSはOEMメーカーに11月より大量出荷すると説明している。


●AthlonやHammer向けPC2700サポートチップセットの計画も

 今回のVTFのセッションでは特に触れられなかったが、VIAはHammer向けのチップセットとしてPC2700をサポートしたチップセットK8T333、K8M333の2製品を予定している。この2つのチップセットについては既にAMD Developer's conference Summer '01において、こうした計画があることは説明されていた。

 K8T333はCPUバスにHyperTransportを、AGP 4Xまたは8X、PC2700またはPC2100が利用可能、16bitのV-Link(533MB/sec)というスペックになっている。さらにK8M333はK8T333にZoetropeコアを統合した統合型チップセットとなっている。エンジニアリングサンプルの出荷時期はK8T333が2002年の第1四半期、K8M333が2003年の第2四半期となっている。

 これまで、特にHammer用チップセットについての計画について明らかになっていなかったSiSもHammer用のチップセットの計画を持っていることが明らかになっている。それがSiS745だ。SiS745はAGPポートを備えた単体チップセットで、SiS645などに採用されているSiS961をサウスブリッジとして利用する。なお、詳細なスペックはまだ決まっていないようで、これからAGPの仕様、メモリの仕様などが決定されるようだ。2002年の第2四半期にエンジニアリングサンプルの出荷が予定されているようだ。

 SiSのAthlon/Duron用のチップセットで、これから発表される製品はSiS740だ。SiS740はSiS650のAthlon/Duron版といえる製品で、基本的な仕様はSiS650とほぼ同じとなっている。

 唯一違うところはサポートするメモリがPC2100とPC133で、333MHzのPC2700はサポートしないことだ。これは、SiS740がSiS645やSiS650よりもやや早めなスケジュールで開発されているためだろう。まだサンプルも出回っていないSiS650に比べて、SiS740は既にマザーボードメーカーにサンプルが配布されており、実際に開発が進められている。実際の製品は第4四半期に登場するとSiSではOEMメーカーに対して説明している模様だ。


●お互いに顔色を窺うマザーボードベンダ

VIAが配布したAOpen AX47の写真
 現時点でマザーボードベンダがサンプルを入手し実際に開発が進められているサードパーティ製Pentium 4用チップセットとしては、VIAのP4X266とSiSのSiS645の2製品がある。既に述べたように、マザーボードメーカーに対してリファレンスマザーボードを渡して評価段階にあるSiSに対して、VIAのP4X266は既にマザーボードの設計も終わっており、VIAからの大量出荷が開始されればいつでもリリースすることができる段階にある。

 だが、基調講演のレポートで述べたように各マザーボードベンダとも、実際に出荷を表明しているところは非常に少ない。ある大手マザーボードベンダの関係者は「なんだかんだいっても、どこのメーカーもIntelと事を起こしたくないと考えている。今は他社がどのようにしてくるか顔色を伺っている段階だ」と述べ、やはりライセンス問題になんらかの決着を見れるまでは出荷は難しいのではないかという見方をしている。初日のレポートでも触れたように、VTFでP4X266搭載マザーボードを展示していたのは5社だけだった。

 しかし、そんな中で新しい動きもある。昨日、VIA Technologiesは、大手マザーボードベンダのAOpenが、AX47というマザーボードを出荷する用意があることを明らかにし、メディア関係者に対して写真を配布している。AOpenからの正式なアナウンスは未だないので、AOpenが正式にAX47を出荷することを意味しているのかは不明だが、それでも大手マザーボードメーカーでP4X266ボードを公開したのはAOpenが初めてということになる。

サウスブリッジ ノースブリッジとmPGA478 I/Oパネル。Ethernetコネクタが付いている

 もしAOpenがAX47を出荷するというのであれば、その後AOpenに対してIntelがどのようなアクションをとるのか、それに注目が集まるだろう。仮にあるメーカーがP4X266を出荷して、もし何事もなければ、当然他社も追随する可能性が高い。

 そういう意味では、どこかチャレンジングなメーカーがP4X266を出荷した場合、その結果どうなるのか(何もないのか、やはりIntelに訴えられるのか)、今、マザーボードベンダの関係者は固唾を飲んでその行方を見守っているところだ。

□VIA Technology Forum 2001のホームページ
http://www.via.com.tw/jsp/en/vtf/index.jsp

(2001年9月7日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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