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秋葉原に登場したTualatinは512KB L2キャッシュのサーバー版


●Intelは9種類のTualatinを計画

 Intelの0.13μm版Pentium III(Tualatin:テュアラティン)が、秋葉原に姿を見せ始めた。といっても、Intelは正式発表前であり、秋葉原局所的なフライング現象だが、秋葉原に流れることは正式発表が近いことを示している。また、Intel自身も今週、モバイル版Tualatinのお披露目をニューヨークで行なうことをアナウンス「Intel To Showcase 0.13 Micron-Based Mobile Processor At TechX NY Trade Show」(http://www.intel.com/pressroom/archive/releases/20010622comp.htm)している。これは、正式な発表ではなく、技術展示程度になると見られるが、Tualatinデビューに向けてIntelも積極的に動き始めたことは間違いない。

 Intelは、Pentium IIIで3種類のTualatinを予定している。サーバー版とモバイル版、そしてデスクトップ版だ。また、来年にはCeleronでもデスクトップ版とモバイル版のTualatinを投入する。さらに、モバイルには低電圧版と超低電圧版があり、それぞれPentium IIIとCeleronが用意されているという。これを整理すると次のようになる。

種別L2FSB電圧出荷
サーバー版Pentium III512KB133MHz1.45V6月
デスクトップ版Pentium III256KB133MHz1.45V?Q3前半
デスクトップ版Celeron256KB100MHz??来年Q2
モバイル版Pentium III512KB133MHz1.4VQ3前半
モバイル版Celeron256KB133MHz?来年Q2
低電圧版Pentium III512KB100&133MHz1.15V9月頃?
低電圧版Celeron256KB100&133MHz1.15V来年頭?
超低電圧版Pentium III512KB100MHz1.1V9月頃?
超低電圧版Celeron256KB100MHz?来年頭?



 Intel幹部は、このうちTualatinベースのPentium IIIについては、サーバー版とモバイル版を優先し、デスクトップ版は小さくとどめると何度も説明している。また、モバイル版とデスクトップ版について、第3四半期に投入する見込みであるとしている。つまり、モバイル版とデスクトップ版の登場にはまだ間がある。しかし、Intelはサーバー版Pentium IIIに関しては、先行して6月に提供するとOEMメーカーに伝えていたという。現在、秋葉原に出回り始めたのはこのバージョンだ。


●Socket 370でサーバーとデスクトップの2バージョン

 サーバー版Tualatinとデスクトップ版TualatinはどちらもSocket 370向けで、パッケージの物理的な形状には大きな違いがないと予想されている。いずれも、FC-PGA2と呼ばれる、フリップチップ実装のチップのダイ(半導体本体)の上に、ヒートスプレッダ(IHS:Integrated Heat Spreader)を被せた形状となる。ちなみに、モバイル版は今年2月のIDFでIntel関係者が見せてくれたパッケージを見る限り、IHSはついていなかった。

 サーバー版とデスクトップ版の最大の違いは、L2キャッシュの量で、サーバー版が512KBなのに対して、デスクトップ版は半分の256KBになっている。といっても、実際には同じダイ(半導体本体)で、L2キャッシュを半分使えるようにしてあるかないかの違いに過ぎないようだ。TualatinベースのPentium IIIの中で、デスクトップ版だけがL2キャッシュが256KBに抑えられている。これは、Pentium 4のデスクトップでの普及を早めるために、Tualatinの性能を抑えようとしていると思われる。

 サーバー版は、秋葉原に出回り始めた1.13GHz版のほかに1.26GHz版も今秋までに投入されるという。予定価格は、1.13GHz版が300ドル台前半、1.26GHz版が400ドル近く。デスクトップ版よりワンランク価格は高くなる見通しだ。CPU単体の価格では、1.26GHzが、Pentium 4ベースのXeon1.7GHzとほぼ同等になる。ただし、サーバーではメモリコストの差が開く(大容量メモリを搭載する)ため、Pentium IIIの方がシステム全体ではかなり割安になると見られる。Intelは、フロントエンドサーバーでは消費電力と放熱量が大きな問題になりはじめたため、サーバー市場ではTualatinもそれなりに重視している。

 一方、デスクトップ版ではIntelは1.13GHzと1.2GHzを同時に投入する予定だ。サーバー版で登場する1.26GHzは、以前はデスクトップでも計画されていたが、現在の予定では提供されないという。また、ボリューム的にも、TualatinベースのPentium IIIは、デスクトップ向けCPU全体のほんの数%分しか提供されない。しかも、Intelはこれをスモールフォームファクタ向けに推奨している。価格も、1.13GHzがPentium 4 1.5GHzより高いレベルと、かなり不利な設定になっている。継子扱いとは言わないまでも、Intelのあまり売りたくないという気持ちがひしひしと伝わってくるようなポジショニングになっている。これは、IntelがデスクトップではPentium 4の浸透を優先するためだ。


●魅力的なサーバー版Tualatinだが

 こうして見ると、Tualatinでは価格面をのぞけばサーバー版Pentium IIIが魅力に見える。L2キャッシュが増えることで、クロック向上の効果以上に性能は上がるし、消費電力は現在のPentium IIIより大きく下がる。しかも、Intel 815系のユニバーサルマザーボードで使えるので、システムコストも低い。

 ただし、PCメーカーがこのバージョンのTualatinをデスクトップに載せることができるかというと、少なくとも中堅以上のメーカーは難しいだろう。PCメーカーが発売するTualatinデスクトップは、256KB L2キャッシュで1.2GHz止まりになる。また、自作向けのCPU単体の流通量に関しても、サーバー版は今後どうなるか、まだ見えにくい。

 いずれにせよ、IntelはTualatinはCeleronが本命と見なしているようで、TualatinベースのPentium IIIはモバイル以外のフィールドでは短命で出荷量の少ない製品に終わりそうだ。例えば、デスクトップでは「米国の不況がPentium 4の普及を加速--年末までにパフォーマンスPCの80%をPentium 4に」(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010612/kaigai01.htm)でレポートした通り、IntelはPentium 4の普及を加速しており、Pentium IIIの比率をどんどん下げつつある。また、サーバー市場ではIntelはPentium 4アーキテクチャで0.13μm版のXeon(Prestonia:プレストニア)の投入を急ぐ。0.13μm化で消費電力が下がるため、ハイデンスサーバー市場まで来年前半にはTualatinからPrestoniaへと誘導しようと計画している。そのため、サーバー版でもTualatinベースのPentium IIIは短命に終わりそうだ。

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【6月25日】Intel、TechXで0.13μmプロセスのモバイルPentium IIIを公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010625/intel.htm


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(2001年6月25日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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