Click


三洋BURN-Proof対応CD-R/RW登場
~本当に書き込みに失敗することは無いのか?



アイ・オー・データ機器のCDRW-SB124BG
 CD-R/RWは、メディア単価が急激に安くなったことと、ドライブの価格も安くなったことで急速に普及した。通常のCD-ROMドライブで読み出せることから、データやアプリケーション配布用のメディアとしても適している。しかし、CD-R/RWはその原理上、バッファアンダーランエラー(後述)がおきてしまうと書き込みが失敗し、そのメディアは基本的に2度と利用できなくなってしまうという欠点があった。そのため、CD-Rを焼くときには、ほかのアプリケーションを起動しないようにするなど、細心の注意を払う必要があった。三洋電機が開発したBURN-Proof技術は、バッファアンダーランエラーをなくして書き込み失敗を防ぐという、従来のCD-R/RWドライブの常識を破る技術である。そのBURN-Proof技術を採用したCD-R/RWドライブがようやく入手できるようになったので、早速その実力を検証してみよう。


●バルク品よりも先にサードパーティ製のリテールパッケージが登場

 三洋電機からBURN-Proof技術が発表されたのは、'99年11月のことであった。そのリリースによると、BURN-Proof技術を採用した初の製品「CRD-BP2」は、'99年11月にサンプル出荷が開始、同12月に量産出荷が開始となっているが、スケジュールが多少遅れたようで、製品として売られるようになったのは、つい最近のことだ。実は'99年末に、サンプル版の製品が手違いでショップで販売されたこと(BURN-Proof対応CD-R/CD-RWドライブのサンプル版販売中)があったのだが、その後入荷されることはなかった。秋葉原では、こうした最新デバイスは、化粧箱入りのリテールパッケージの前にバルク品が登場することが多いのだが、CRD-BP2に関しては、バルク品よりも先にサードパーティ製のリテールパッケージが登場することになった(今年1月にCRD-BP2のバルク品が2月に入荷するとして、予約を取り始めていたショップもあったのだが、そちらの入荷が遅れ、リテールパッケージのほうが先になった)。

OEM品なので、型番がCRD-BP2IOになっている

 そのBURN-Proof技術を採用したCD-R/RWドライブの第1弾は、アイ・オー・データ機器の「CDRW-SB124BG」である。CDRW-SB124BGは、三洋電機製のBURN-Proof対応CD-R/RWドライブCRD-BP2(のOEM品)とCDライティングソフトの「B's Recorder GOLD」の最新版(Ver 1.63)、およびオーディオキャプチャ機能付きCD Playerソフト、CD-Rメディア2枚、CD-RWメディア1枚、オーディオCDケーブル(NEC用、DOS/V用、SB16/DV用の合計3本)をセットにした製品だ。CRD-BP2は、Ultra SCSI/SCSI-2に対応した内蔵ドライブだが(50ピンフラットケーブルで接続)、SCSIホストアダプタやケーブル類はセットには付属していないので、別途用意する必要がある。また、パケットライトソフトは添付されていないが、同梱されているユーザー登録ハガキを送付することで、パケットライトソフトの「B's CLiP」が無償で送付されてくる。


●BURN-Proof技術とは?

ドライブ前面にBURN-Proofの文字が刻まれている
 BURN-Proof技術とは、CD-R/RWドライブの欠点であったバッファアンダーランエラー(書き込んでいる途中にPCからCD-R/RWドライブへ送出されるデータが、ほかのプロセス等の割込みにより瞬間的に滞ってしまうために発生するエラー)を防ぐ技術である。BURN-ProofのBURNという名称も、Buffer Under RuNからつけられている(余談だが、burnという英単語には焼くという意味があり、CD-Rを焼くことも英語ではburnという。BURN-ProofのBURNには、そうした意味もあるのだろう)。従来のCD-R/RWドライブは、書き込み用のレーザーを常時オンにし続けて記録していたため、データが途切れてしまうとそこでデータの間隔があいてしまい、そのCD-R/RWメディアは読み出せなくなってしまっていた。BURN-Proof技術を採用したCD-R/RWドライブでは、バッファ内のデータの残量を監視し、バッファが空になりかけたら、区切りのよい場所で書き込みをいったん停止し(レーザーを切って、その場所を記録する)、またデータが溜まってきたら、その停止した場所から再び書き込みを開始するという仕組みで、バッファアンダーランエラーを解消している。

 従来のCD-R/RWドライブでは、バッファアンダーランエラーを起こさないように、書き込み中は一切ほかのアプリケーションを起動しないようにしたり、スクリーンセーバーをオフにしたり、パワーマネージメント機能をオフにするなど、さまざまな約束事を守る必要があったが、BURN-Proof技術を採用したCD-R/RWドライブならそうした注意を払う必要はない。CD-R/RWの使いにくさを解消する画期的な技術であろう。


●CRD-BP2の性能は?

 CRD-BP2は、BURN-Proof技術を採用していることが売りだが、CD-R/RWドライブとしての基本性能も高い。CD-Rの書き込み速度は12倍速、CD-RWの書き換え速度は4倍速、CD-ROMの読み出し速度は32倍速で、CD-R/RWドライブとしては、現時点で最速を誇る(12倍速書き込みができるCD-R/RWドライブとしては、ほかに三洋電機のCRD-RW2やプレクスターのPX-W124TSiがある)。バッファは2MBと標準的である。CD-ROM、CD-ROM XA(Mode 2)、CD-DA(音楽CD)、CD TEXT、CD-I、Mixed Mode(CD-ROM+CD-DA)、CD Extra、ビデオCDとほとんどのフォーマットに対応している。なお、CDのローディングにはトレイ方式を採用している。


●看板に偽りなし!どんな状況でも驚くほど安定した書き込みを実現!

 BURN-Proof技術の威力がどれほどのものか、早速検証してみることにした。テスト環境は以下に示した通りである。

 まず、書き込みの安定性を調べるために、バッファアンダーランエラーが起こりやすいとされているオンザフライ方式(ディスクイメージを作らずに直接書き込む方式)で、Windows 98 Second EditionのCD-ROMを、CDtoCDコピーしてみた。ライティングソフトとしては、CDRW-SB124BGに添付されているB's Recorder GOLDを利用した。

 書き込み条件は以下の通りとした。

 A. ほかのアプリケーションを動かさずに通常に12倍速書き込みを行なう
 B. 12倍速書き込み中にWord 2000やExcel 2000を起動して文書作成を行なう
 C. 12倍速書き込み中にLAN経由でインターネットにアクセスして、ネットサーフィンを行なう
 D. 12倍速書き込み中にベンチマークプログラム(3DMark2000)を動かす

付属のB's Recorder GOLDは、BURN-Proofに対応している
 通常のCD-R/RWドライブで、CD-Rを焼くときには、B~Dのようなことはしてはならないとされているのだが、BURN-Proof技術を採用したCRD-BR2では、どの場合でも問題なく書き込みが行なえた(ほかのCD-ROMドライブで読み出せることを確認した)。書き込み速度も非常に高速で、A~Cの場合は、4分2秒~4分5秒程度、Dの場合は、4分20秒程度でCDコピーが行なえた(ちなみに、8倍速で書き込んだところ、5分40秒ほどかかった)。

 比較のために、プレクスターの8倍速CD-RドライブPX-R820Ti(SCSI接続)で、同じ条件で書き込み(こちらは8倍速だが)を行なってみたところ、こちらも全て問題なく書き込みが行なえた。CD-Rの書き込み中にほかのアプリケーションを起動することは絶対にやってはならないとされているが、最近はシステムの性能も上がったので、以前よりバッファアンダーランエラーによる書き込み失敗は減っているようだ。

 そこで、もっと厳しい条件でのテストとして、LAN経由(10BASE-T)でサーバにあるファイルを合計600MBほど、12倍速のオンザフライで書き込むテストを行なってみた。12倍速ならデータ転送速度は1,800KB/秒となるが、10BASE-Tの転送速度は理論最大値でも10Mbps(1,250KB/秒)なので、データ転送が確実に間に合わないことになる。その場合でも、CRD-BR2は、問題なく書き込みが行なえた。この場合、BURN-Proof技術が働いているようで、書き込みインジケータの様子を見ていると、ずっと書き込み動作を行なっているのではなく、ときどきインジケータが消えて、ディスクがしばらく空転したのち、再び書き込みを再開していることがわかる。同じ条件でPX-R820Tiで書き込みを行なったところ、データ転送が間に合わないというエラーメッセージが出て、異常終了してしまった。こうした悪条件下でこそ、BURN-Proof技術の威力が発揮されるようだ。

 また、CRD-BP2は、CD-ROMの読み出し性能も最大32倍速と高い。Ziff-Davis,Inc.のCD-ROM性能測定ベンチマークプログラムCD WinBench 99 Version 1.1を用いて、CRD-BP2およびPX-R820Ti、LTN-382(最大40倍速CD-ROMドライブ)のデータ転送速度を計測したところ、以下のような結果になった。結果はグラフにまとめたが、ほぼ公称通りの性能が出ているようだ。ディスクの外周なら30倍速程度の性能は出ているようなので、読み出し用として別途CD-ROMドライブを用意する必要もないだろう。

読み出し性能ベンチマーク結果
【CD WinBench 99 Version 1.1/Transfer Rate】
CRD-BP2
(最大32倍速)
PX-R820Ti
(最大20倍速)
LTN-382
(最大40倍速)
Inside2,100KB/秒1,520KB/秒2,490KB/秒
Outside4,340KB/秒2,600KB/秒5,350KB/秒

【テスト環境】
CPU:Pentium III 500E MHz(Coppermineコア)
マザーボード:ABIT BE6
メモリ:128MB SDRAM(PC100 CL=2)
ハードディスク:Western Digital Caviar AC14300
SCSIホストアダプタ:Adaptec SCSI Card 19160(Ultra160 SCSI対応)
ビデオカード:Creative 3D Blaster GeForce(GeForce 256搭載)
LANカード:IBM Ether Jet Adapter
CD-ROMドライブ:LITE-ON Technology LTN-382(最大40倍速:ATAPI接続)
OS:Windows 98 Second Edition


●価格はやや高いが安心料だと思えば納得できる

 CDRW-SB124BGは、定価59,800円という値段がつけられており、実売は5万円前後のようだ。8倍速CD-R/RWドライブのバルク品なら2万円以下で購入できることを考えると、いくら12倍速書き込みができるとはいえ、やや高いという印象を受ける。しかし、検証結果からもわかるように、BURN-Proof技術の効果は絶大である。従来は、CD-Rを焼いているときに、ほかの作業を行なうことはタブーであったため、パワーユーザーの中には、CD-R焼き専用マシンを用意する人も、そう珍しくはなかった。だが、BURN-Proof対応ドライブなら、CD-Rを焼きながらほかの作業ができるため、専用マシンを用意する必要もなくなる。また、CPUパワーの低いマシンでも安定した書き込みが行なえることも利点だ。通常のCD-R/RWドライブで、オンザフライ方式でCDtoCDコピーを行なう場合、送り手側のCD-ROMドライブの読み出し速度が十分高速でないとコピーが失敗することが多かったが、BURN-Proof対応ドライブなら、極端な話、送り手側の読み出し速度が書き込み速度よりも遅くても、問題なくコピーできる。

 CD-Rを焼くときには、きちんと焼けたか気になってしまうものだが、BURN-Proof対応ドライブならそうした心配は無用だ。その安心感は、価格差を十分補うことできるだろう。CD-Rを頻繁に焼くユーザーなら、初心者から中上級者までお薦めできる。

 ただし、CDRW-SB124BG(CRD-BP2)はインターフェイスにSCSIを採用しており、SCSIホストアダプタをもっていないユーザーは、さらにコストがかかってしまう。三洋電機では、CRD-BP2と同等のスペックで、ATAPIに対応したCD-R/RWドライブ(CRD-BP900)も発表している。ATAPI対応製品なら、コスト的にも有利で、市場でのニーズも大きいだろう。ATAPI対応版が3万円台前半で購入できるようになることを期待したい。

□AKIBA PC Hotline! 関連記事
【2月26日号】書き込み失敗のないBURN-Proof対応CD-Rドライブがデビュー
第1弾はアイ・オー・データ機器の「CDRW-SB124BG」
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20000304/burnproof.html

バックナンバー

(2000年3月10日)

[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp