Click


元麻布春男の週刊PCホットライン

動画性能を計測するベンチマークソフト:Video2000


■新しいベンチマークソフト「Video2000」

 DirectXベースの3Dグラフィックスベンチマークプログラム「3DMark」シリーズで知られるMadOnion.comが、DirectX 7ならびにDirectShowベースでビデオカードのビデオ(動画)性能を測るベンチマークプログラム「Video2000」をリリースした。今までこの種のものが全くなかったわけではない(たとえばIntel Media Bench等)が、どれも決め手に欠けていた印象が強い。大半の雑誌やWeb-zin等で、共通に用いられる標準ベンチマークテストのようなものは存在していないのがその証拠だ。

 MadOnionの3DMark 2000は、多くのメディアで広く使われており、最近はZiff Davis Inc.の3DWinBenchに代わって標準ベンチマークテストの座についた感がある。また同社は、アプリケーションベンチマークテストの標準ともいえるBAPCoのSYSmark2000の開発にも協力している。それだけに、Video2000には、現在欠けている部分を埋めてくれるのではないかとの期待がもたれるのである。

 Video2000は3DMark 2000同様、MadOnionのホームページからダウンロード(21.3MB)できる。これまた3DMark 2000同様、無償版と29.99ドルのPro版があり、Pro版はResult Viewerをローカルで使うことが可能になる。手元で複数のビデオカードのテスト結果を横並びで比較するにはPro版が不可欠だが、その必要がないのであれば、オンライン版のResult Viewerを使うことも可能だ(ただしInternet接続環境必須)。

 3DMark 2000では、メガデモの流れをくむ? ゲームソフト開発会社、Remedy Entertainmentの3Dグラフィックスエンジン(MAX-FX)を使っていることがウリの1つだった。このVideo2000では、Faroudjaの技術協力を得ていることがウリの1つかもしれない。Faroudjaは、100万円以上するラインダブラーの製造・販売でAVマニア(特にプロジェクター愛好家)には知られる存在。一時、S3とライセンス契約(Faroudjaの技術の独占使用契約)していたのだが、せいぜい2~3万円程度のビデオカードに使うには、Faroudjaの技術は高価過ぎたようで、それらしい成果(Faroudjaの技術を用いたチップ)が出てこないまま、独占使用契約は失効してしまった。

 そのVideo2000だが、残念ながら完全に無人のバッチ実行はできない。見本になるグラフィックスと、実際にビデオチップが描画したグラフィックスを、人間が見て審査しなければならないテストが多く含まれているからだ。このあたりは、やったことがある人ならZiff Davisの3DWinBenchに似ていると感じるかもしれない。テストの中には、若干微妙な判断を要求されるものも含まれるため、どうしてもテスターの主観が混じる可能性がある(異なるテスターのテスト結果を横並びで比べるべきではないと思う)。Video2000の結果を見る場合はそれを考慮すべきだ。

 Video2000のテスト結果は、大きく3つに分かれる。動画の表示品質を示すQuality marks、動画の再生性能を示すPerformance marks、動画に関連した機能の充実ぶりを示すFeature marksだ。そしてこれらの合計であり、総合性能と言うべきVideo marksが算出される。上で人間が見て審査しなければならないと書いたのは、主にQuality marksが人間の判断を必要とするテストで構成されているからだ。

 Video2000で面白いのは、DVD-Videoの再生性能を測ることができる点だろう。ただ、DVD-Videoの再生性能は、組み合わせるDVDプレーヤーの性能も抜きにしては語れない。そこでVideo2000では、Video2000自身にビルトインのMPEG-2デコーダ(Reference Decoder)に加え、別のDVDプレーヤーソフト(Defauto Decoder)を用いたテストもできるようになっている。つまり、バンドルされているDVDプレーヤーソフト込みで、再生性能が測れるわけだ。


■ベンチマークテスト結果

 今回筆者は、手元にあるビデオカードのうち、比較的新しいもの4種を選んでテストしてみた。MatroxのMillennium G400(MGA-G400)、3DfxのVoodoo3 3000 AGP(Voodoo3)、Diamond MultimediaのViper II Z200(Savage 2000)、ELSAのERAZOR X2(GeForce 256)の4種だ(残念ながら今回、この分野で定評のあるATI Technologiesの新チップ、RAGE128 Proを搭載したカードを用意できなかった)。本来は、それぞれのビデオカードにバンドルされているDVDプレーヤーソフトを組み込んだ状態でテストするべきなのだが、Voodoo3 3000 AGPにはDVDプレーヤーがバンドルされていない。また、Millennium G400にバンドルされているMatrox DVDプレーヤー(Software CinemasterのOEM)では、Video2000が途中で終了するという結果になってしまった。そこで、ここではすべてのビデオカードに対して、WinDVD 2000 Ver 2.1(カノープスによるパッケージ版)を組み合わせてある。

 表に示したのが、Video2000のテスト結果と、テスト環境、および用いたドライバのバージョンである。それぞれ、テスト時点においてチップベンダのWebサイトに用意された公式の最新版(ただしβ版を含む)を用いた(つまりERAZOR X2にはNVIDIAのリファレンスドライバを用いている)。

【Video2000】
カード名
(チップ名)
Video marksQuality marksPerformance marksFeature marks
Millennium G400
(MGA-G400)
2,019 970564486
Voodoo3 3000
(Voodoo3)
1,855 746558552
Viper II Z200
(Savage 2000)
2,2701,120623528
ERAZOR X2
(GeForce 256)
2,2231,030606586

解像度色数リフレッシュレート
1,024x768ドット16bit Color85Hz

【ドライバ】
Matrox MGA-G400    Ver.5.52.015    2000/2/25
3Dfx Voodoo3-3000  Ver.1.04.01Beta 2000/2/28
S3 Savage 2000     Ver.9.01.21Beta 2000/1/21
NVIDIA GeForce 256 Ver.Det. 3.68   2000/1/13

OS             Windows 98 SE
CPU            Pentium III 600B
マザーボード   Intel CC820
チップセット   Intel i820
メモリ         128MB PC100
サウンドチップ YMF744
DVDプレイヤー  WinDVD 2000 V2.1


■動画再生も優秀なGeForec256搭載ビデオカード

 結果だが、おおむねチップの発表順と思って良い。今回筆者が行なったテストにおいて、最も結果が良かったのはViper II Z200だが、ERAZOR X2も肉迫している。ERAZOR X2のPerformance marksの結果の特徴は、Blitterの性能が極めて高いことだ。これには4枚のカードのうちERAZOR X2だけが群を抜いて高速なメモリ(DDR SGRAM)が採用されていることが貢献している可能性が高い(残念ながら手元にSDR版のGeForce 256のカードがないので、確認することができない)。

 逆にViper II Z200のPerformance marksで特徴的なのは、CPU占有率が極めて低いことだ。これは今回テストに用いたWinDVD 2000だけでなく、Video2000のReference Decocerでも同じ結果になっている。おそらくDirectX 7、DirectShowに準拠したDVDプレーヤーであれば、低いCPU占有率が期待できるだろう(つまり、比較的CPUパワーがないユーザーでも、コマ落ちの少ない再生が期待できる)。Quality marksでもこの2枚の結果が飛びぬけている。

 比較的新しいカードであるにもかかわらずViper II Z200のFeature marksの結果がパッとしないのは、ディスプレイドライバにVideo Portの機能が全くインプリメントされていないのと、AGPメモリ(Non Local Memory)を全く利用できないためだ。最近のS3のビデオチップは、ディスプレイドライバの不備がなかなか解消しない印象が強い。

 上記の2枚には及ばないとは言え、Millennium G400の性能もそれほど悪いわけではない。逆に、4枚の中でMillennium G400だけが備えるDual Headのメリット(残念ながらVideo2000では計測できない)まで考えれば、こと動画再生に関しては十分競争力を持つと考えてもいいだろう。Voodoo3 3000は、さすがに古さが目立ち、スケーラーで拡大・縮小した際などブロッキーな画像になることが多かったが、間もなく次世代のチップ(VSA-100)がデビューすることを考えればやむをえないところだろうか。

 今回のテストで思ったのは、やはりGeForce 256の強さである。3Dグラフィックス性能の優秀さで高い評価を受けるGeForce 256だが、動画再生においてもやはり優秀なようだ。SDRメモリを使ったカードは、もう少しPerformance marksが落ちる可能性があるものの、チップとドライバが同じであればQuality marksとFeature marksについては全く同じ性能が期待できる。最近、2万円を切るSDRメモリ搭載のGeForce 256ベースのカードが登場しており、それらのコストパフォーマンスも期待できる。


【3月3日追記】

■付属のソフトウェアDVDプレーヤーでCPU占有率が低下

 Viper II Z200とERAZOR X2について、標準添付(バンドル)されているソフトウェアDVDプレーヤーとの組合せについて追試を行なったので、その結果を簡単に紹介しておこう。

 表1は、前回行なったテスト結果(ソフトウェアDVDプレーヤーにパッケージ版のWinDVD 2000を組み合わせて行なったVideo2000の結果)と、それぞれのビデオカードにバンドルされているソフトウェアDVDプレーヤーを組み合わせて行なったVideo2000の結果をまとめたものだ。Viper II Z200にはZoranのソフトウェアDVDプレーヤーが、ERAZOR X2にはELSAmovieというソフトウェアDVDプレーヤーがそれぞれ添付されている。ELSAmovieは、Software CinemasterのOEMだが、同じSoftware CinemasterのOEMであるMatrox DVD Playerと異なり、Video2000を正常に実行することができた。

【表1】
カード名
DVDプレーヤー
Video marksQuality marksPerformance marksFeature marks
Viper II Z200
WinDVD 2000
2,2701,120623528
Viper II Z200
Zoran DVD
2,3321,120685528
ERAZOR X2
WinDVD 2000
2,2231,030606586
ERAZOR X2
ELSAmovie
2,3501,032731586

 この表を見て分かるのは、前回僅差でトップの成績を収めたViper II Z200を、ERAZOR X2が逆転したことだ。ERAZOR X2の成績が最も大きく伸びたのは、Performance marksの分野である。それも、調べてみると、DVD再生を模したテストで大きく成績が向上している。そこで、その結果を抜き出したのが表2だ。

 表2にあるReference Decoderは、Video2000が内蔵するMPEG-2デコーダを指す。ここではViper II Z200の性能が優秀である。前回用いたWinDVD 2000においても、Viper II Z200、ERAZOR X2共にReference Decoderに比べ著しいCPU占有率の改善(低下)が見られる。これはWinDVD 2000が、それぞれのグラフィックスチップが備えるハードウェアMotion Compensationに対応しているためだと考えられる。

【表2:Reference Decoder】
カード名
DVDプレーヤー
3Mbits/秒6Mbits/秒9Mbits/秒
Viper II Z200
WinDVD 2000
59.22%76.20%83.88%
Viper II Z200
Zoran DVD
58.28%77.74%83.70%
ERAZOR X2
WinDVD 2000
97.90%99.62%99.74%
ERAZOR X2
ELSAmovie
97.86%99.44%99.47%

【表2:Default Decoder】
カード名
DVDプレーヤー
3Mbits/秒6Mbits/秒9Mbits/秒
Viper II Z200
WinDVD 2000
14.92%29.84%42.88%
Viper II Z200
Zoran DVD
8.37%20.37%29.22%
ERAZOR X2
WinDVD 2000
22.86%52.88%59.80%
ERAZOR X2
ELSAmovie
11.96%25.67%39.31%

 しかし、バンドルされたプレーヤーに交換すると、さらにCPU占有率が劇的に低下した。特にERAZOR X2での改善ぶりが著しい。3Mbits/秒および6Mbits/秒のMPEG-2ストリームに関しては、約半分になっている。やはり、バンドルされた専用版だけのことはある、という結果だ。トータルの成績でERAZOR X2の成績がViper II Z200を上回ったことには、これが大きく貢献している。

 ただし、最後に一言だけ付け加えておこう。Video2000のテスト(特にクオリティテスト)においては、それぞれのビデオカードが描画する「絵」が、Video2000が示す「良い例」と「悪い例」のどちらに近いか、あるいは特定の現象が見られたかどうか、をテスターが判断する。このとき、「どれだけ近いか」という点は考慮されない。要するに二者択一なのである。実際にテストして、Viper II Z200、ERAZOR X2ともに、良い例に近い、と判断したテストにおいて、Viper II Z200の方がより近い場合(ただしスコアには反映されない)が多く見受けられた。つまり、Quality marksの数字には表れない品質差が、Viper II Z200とERAZOR X2の間にはある。もちろん、だからといってこれはERAZOR X2を貶めるものでも、前回の結論を覆すものでも全くない。高速なメモリを用いたことによる性能向上は、3Dグラフィックスだけでなく、動画性能にも貢献している。現時点でトップのビデオカードであることは間違いない。

バックナンバー

(2000年3月1日)

[Text by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp