笠原一輝のユビキタス情報局

Centrino2の発表が延期された理由とは




COMPUTEX TAIPEIで多数公開されたCentrino2を採用したノートPC。写真はASUSTeK Computerの「M51Vr」

 すでにお伝えしたとおり、IntelがMontevinaの開発コードネームで開発を続けてきたCentrino2の発表を7月の第3週に行なうことを明らかにした。この7月の第3週というスケジュール、そもそもIntelが当初計画していたものではなく、先週になり急遽この時期に延期するという、ドタバタの中決まったことなのだ。

 OEMベンダー筋の情報によれば、急遽延期が決まったのは、Centrino2のチップセットであるIntel 45 Expressの内蔵GPU周りに問題が発生し、それを修正するのにそれなりの時間がかかることがわかったからだという。

●当初は6月24日に予定されていた製品発表

マローニ主席副社長の基調講演では、「Coming soon..」とだけ書かれたが、その後発表されたプレスリリースで発表が7月に延期されたことが明らかにされた」

 そもそもIntelは6月中にCentrino2を発表し、出荷する予定で動いていた。実際、4月に上海で行なわれたIntel Developer Forum(IDF)では、Centrino2を統括するモバイルプラットフォーム事業本部 事業部長のダディ・パルムッター副社長は「Centrino2は6月に発表する」と言い切っていた。つまり、4月の時点では6月に発表することが確定的だったと考えていいだろう。

 OEMベンダー筋の情報によれば、IntelはもともとCentrino2の発表を6月24日に計画していたのだという。当初の計画では6月24日に、プロセッサー・ナンバーで9000番台のCore 2 DuoのCPU、Intel 45 Expressチップセット、Intel Wireless Wi-Fi/WiMAX Link 5050 Series(Echo Peak)、Intel Wireless Wi-Fi Link 5000 Series(Shirley Peak)、Intel 82567LM Gigabit Network Connection(Boazman)などが一挙にリリースされる予定となっていた。

 しかし、それが先週になり、突然IntelからOEMベンダーに対して、6月24日の発表を中止し、1カ月程度延期されるとアナウンスがあったのだという。時期に関してはすぐは確定せず、当初は8月にずれ込むという可能性も検討されたそうだが、最終的に7月第3週と決定したようだ。ただし、実際の製品出荷はさらに遅くなる可能性が高く、8月から順次各OEMベンダーから出荷されるということになりそうだ。こうしたIntelの動きを受け、Centrino2を搭載したノートPCの発表を予定していたPCベンダーは、先週から急遽発表予定を延期するなどの対応に迫られた。

●発表延期の最大の要因はGMシリーズの内蔵GPU周りの問題

 急にこうした延期が決定した理由は、どうも1つだけという訳ではないようだ。台湾で業界関係者に多数聞いてみたところ、MontevinaプラットフォームのチップセットであるIntel 45 Expressチップセット、特にGPUが内蔵されている統合型チップセットのモデルに問題が発生していること、Montevinaで利用される無線関連のFCCによる認定の遅れなどが原因であることがわかってきた。

 OEMベンダー筋の情報によれば、Intel 45 Expressチップセットには以下のようなモデルが用意されているという。

【表1】Intel 45 Expressチップセットのスペック(筆者予想)
  GM47 GM45 PM45 GS45 GL40
FSB 1,066MHz -
667MHz
メモリ DDR3-1066 -
DDR3-800 -
DDR3-667
DDR2-800 -
DDR2-667
GPU コアクロック周波数 640MHz 533MHz - 266MHz 333MHz
Direct3D 10対応 -
PCI Express x16 -
サウスブリッジ ICH9M/ICH9M-Enhanced ICH9M

 GM47はハイエンド向け、GM45とPM45はメインストリーム向け、GS45はパッケージ自体が小型でSFF(Small Form Factor、小型サイズの筐体)向け、GL40はバリュー向けという位置づけとなる。リリース時にはGM47、GM45、PM45の3製品が投入され、GS45とGL40は第3四半期中にリリースされるというスケジュールになっているという。

 このうち問題が発生していたのは、GM47、GM45といったGPUを内蔵している統合型チップセットだったという。あるOEMベンダーのエンジニアは「IntelからGMシリーズの表示まわりに問題が発生する可能性があるとという通知を受けた。このためIntelはデザインを変更し、これを解消すると通知してきたため、我々もそれに対応する時間が必要になる」と説明する。つまり、IntelがOEM/ODMベンダーに対して提供しているデザインガイドを修正し、それに併せてベンダー側でもマザーボードのデザインに手を入れる必要があるため、その時間をとるために発表を1カ月遅らせ、実際の製品出荷に関しては2カ月程度遅らせるという決断がされたのだという。

 また、Intelの情報に詳しい別の関係者は「Montevinaのように無線コンポーネントを含むパーツの場合は、FCC(Federal Communications Commission、連邦通信委員会)の認定を得なければならないのだが、何らかの事情でそれが遅れているらしいからだ」と説明する。実際、Intelは最新のロードマップの中で、WiMAXとWi-Fiの両方式をサポートする無線モジュールであるIntel Wireless Wi-Fi/WiMAX Link 5050 Series(Echo Peak)の出荷を、年末のクリスマス商戦前に変更するとOEMベンダーに伝えており、そうした無線周りで何かが起きている可能性は高い。

 確かに、FCCの認定を通さなければ、米国での販売ができなくなるため、それが事実だとすれば、これも発表や出荷が延期された理由の1つであると可能性がある。ただ、FCCの問題はあくまで米国内での問題であり、日本などの他の地域でも遅らせる理由にはなり得ない。もちろん米国は最大の市場であり、それだけで充分理由にはなりうるが、これだけで遅らせる決断がされたとは考えにくい。やはり、前述のGMシリーズの内蔵GPUの問題も併せて、複合的な理由で延期が決断されたと考えるのが妥当だろう。

 なお、これらの問題はすでに対処法が見つかっており、Intelは問題の修正に向けて動き始めているという。このため、当初の予定よりは遅くはなるが、これ以上の遅れを出すことはなく済みそうな見通しだという。

ショーン・マローニ氏の基調講演でのCentrino2の内蔵GPUを利用して3Dゲームを実行しているデモ

●IntelブランドのSSDも投入、容量は80GBと160GB

左側のHDDの上に置いてある黒い箱がIntelのSSD。第3四半期に投入される見通しで、当初の容量は80GB、2008年の末には160GBのモデルが投入される見通し

 Intelは、マローニ氏の基調講演の中で、ノートPC向けに自社ブランドのSSDをOEMベンダーに供給することを明らかにした。OEMベンダー筋の情報によれば、「Intel High Performance SSD Client」と名付けられた製品がそれで、X25-Mという2.5インチフォームファクタの製品とX18-Mという1.8インチフォームファクタの製品という2つのラインナップが用意されている。インターフェイスはSATAのみとなり、PATAモデルは用意されない。

 製品投入は第3四半期が予定されており、リリース時には80GBの容量の製品が投入される。2008年末までには160GBのモデルも投入される予定になっており、実際に製品として投入されることになれば、HDDに比べて容量が小さすぎるというSSDの問題もかなり改善されることになるため、期待したいところだ。

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【6月4日】【COMPUTEX】Intel、Centrino2の発表は7月3週に決定
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【3月7日】【CeBIT】Centrino2/Centrino Atom/4シリーズチップセット説明会
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0307/cebit11.htm
【3月5日】Intel、Montevinaのブランド名を「Centrino2」に決定
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0305/cebit01.htm

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(2008年6月6日)

[Reported by 笠原一輝]


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