IDF Spring 2003基調講演レポート

立ち上がるPCI Express
~2004年にチップセットなどが勢揃い


基調講演におけるPCI Expressのデモ
会場:San Jose Convention Center
会期:2月18日~21日(現地時間)

 IDFの3日目はエンタープライズデーと名付けられ、サーバー、ワークステーション、そしてネットワークに関する話題を取り上げる1日だった。この日、Intel エンタープライズプラットフォームグループ ジェネラルマネージャのマイク・フィスター副社長は、主にXeonやItaniumといった同社のエンタープライズ向けプロセッサの基調講演を行なったが、後半に同社が次世代I/Oバスとして推進するPCI Express(開発コードネーム:3GIO、3rd Generation I/O)に関する話題にふれた。

 本レポートでは、IntelのPCI Expressのサポートに関するプランを中心に、PCI Expressが置かれている現状、今後の展望を紹介していきたい。

●エンタープライズ市場におけるPCI Expressの採用を呼びかけたフィスター氏

 “Intelはエンタープライズ市場で一番最初にPCI Expressを導入したがっている”、これは筆者の感想ではなく、サーバー、ワークステーションのマーケットの関係者であればもはや周知の事実と言える認識だ。というのも、昨年のこの段階では、Intelは2003年の後半にはPCI Expressを導入しようと考えていたからだ。だが、この計画はやや遅れ、実際には2004年の前半にずれ込むこととなった。それでもIntelは、最初にサーバー、エンタープライズでPCI Expressの導入を進めたい意向のようだ。

 その何よりの証拠が、クライアントに関する基調講演ではPCI Expressについてはほとんどふれられなかったのに、フィスター氏のエンタープライズに関する基調講演では、PCI Expressについて多くの時間が割かれたことだ。

 フィスター氏は「PCI-Xに換えてPCI Expressを利用することで、ボード上の信号線の配線が楽になる。PCI ExpressではPCI-Xに比べて53%もボード上の面積を少なくすることができる」と述べ、PCI Expressのメリットを強調した。そして、Intelのシリコンを利用した、PCI Expressのデモを行なった。フィスター氏が2チップ間をPCI Expressで接続し、実際にデータの転送を行なうというものだ。これらにより、PCI Expressの開発が順調に進んでいることを強調し、各ベンダに採用を呼びかけるというのがフィスター氏の狙いだろう。

シリアルバスのPCI Expressは、パラレルバスのPCI-Xに比べて配線が楽になると強調 デモに利用されたシステム。PCI Expressのチップ間でデータが送受信される模様がデモされた

●ブリッジチップなどによりPCI-Xも同時にサポート

2004年にはPCI-Xブリッジを利用して、PCI ExpressとPCI-Xの2つのバスアーキテクチャがサポートされる

 だが、Intelの思惑に反して、サーバーベンダの中にはPCI-Xのサポートを主張しているところもあるというのは、昨年のIDF Springのレポート( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0301/idf06.htm )で述べたとおりだ。サーバーベンダの中には、PCI-Xを導入したばかりで、顧客資産の保護などの理由からPCI-Xのサポートを続けたいという意向のベンダがあったのだ。

 Intelは、この声に対してブリッジチップというソリューションで答えることにしたようだ。フィスター氏は、2004年のPCI Expressベースのシステム構成図を表示したが、そこにはPCI-Xへのブリッジチップが描かれていた。

 実際、すでにPCI ExpressとPCI-Xのブリッジチップは規格が策定されている。PCIブランドの規格を策定するPCI-SIG議長のトニー・ピエース氏によれば「すでにPCI ExpressとPCI-Xのブリッジチップは策定が終了している」とのことで、ベンダーはその仕様に基づきPCI ExpressからPCI-Xへのブリッジチップを出荷することが可能になっている。

 OEMベンダ筋の情報によれば、Intelも開発コードネームDobson(ドブソン)と呼ばれるPCI Expressへのブリッジチップを導入し、PCI Express x2からPCI-Xへのブリッジを可能にする。

 こうした製品により、OEMベンダはPCI-Xのサポートを続けることができるため、現在では多くのベンダがPCI ExpressとPCI-Xの両方をサポートするマザーボードの準備を始めている段階であるという。


●2004年にエンタープライズ向けPCI Express関連製品を次々と投入

 すでに述べたように、Intelは2004年に次々とPCI Express関連の製品を投入する計画だ。

 情報筋によると、エンタープライズ関連では、Xeonの4ウェイサーバー、つまりXeon MP向けにはTwincastele(ツインキャッスル)、XeonのDPサーバー向けにはLindenhurst(リンデンハースト)、Xeonワークステーション向けにはTumwater(タムウォーター)を2004年の前半に投入するという。

 Nocona(ノッコナ)と呼ばれる次世代XeonをサポートするLindenhurstおよびTumwaterの両製品は、いずれもデュアルチャネルのDDR2-400をサポートし、各チャネル4DIMM、合計で8DIMMを実装可能で、メモリはLindenhurstが最大32GB、Tumwaterが最大で16GBまで使用することができる。x16、x8、x4のPCI Expressをサポートしているほか、64bitのPCI-X、64/32bitのPCIが利用可能となっている。

 チップセットだけでなく、ネットワークコントローラに関してもPCI Express対応版が投入される。フィスター氏は基調講演の中で、IntelがCranbrook(クランブロック)、Dual Northway(デュアルノースウェイ)と呼ばれるPCI Expressに対応したネットワークコントローラを2004年に出荷することを明らかにした。

 フィスター氏は詳細は語らなかったものの、情報筋によれば、Cranbrookはサーバー向けのギガビットEthernet 2チャネルのコントローラで、クロック周波数2.5GHzでx4レーンのPCI Expressのバスインターフェイスをサポートし、TOE(TCP/IPオフロードエンジン)機能を持っているという。TOEは前回のIDF Fall 2002で公開された技術で、データ転送をするためのネットワークプロトコルの各層に処理を加え、データ転送機能をメインのホストプロセッサからオフロードすることで、転送速度を上げ、消費電力を低減することで、ホストプロセッサの負荷を下げるという技術だ。

 Dual Northwayはエントリーサーバー向けのギガビットEthernet 2チャネルのコントローラで、やはり2.5GHzでx4レーンのPCI Expressバスインターフェイスをサポートする。また、Northwayはワークステーション、デスクトップPC向けのギガビットEthernetコントローラで、2.5GHzの1xレーンのPCI Expressをサポートする。

 また、これら明らかになっているチップ以外にも、10ギガビットEthernetをサポートするLangtry(ラングトレイ)として計画されているチップも、PCI Expressに対応することになるという。

 このように、エンタープライズ関連に、IntelはPCI Expressに対応したシリコンを2004年に次々と投入する。Itanium2向けのチップセットなどに関しては明らかになっていないが、おそらく2004年に投入されるチップセットやItanium2のベンダが投入するチップセットなどでPCI Expressがサポートされるようになる可能性が高く、IAサーバーに関してはほとんどがPCI Express対応となる可能性が高い。

IntelのI/Oロードマップ。すべてのI/Oはシリアルに向かうことになる。PCI Expressはこのうち、チップ-チップ間の接続に利用される Intelのエンタープライズ向けチップセット、ネットワークコントローラ、ブリッジチップのロードマップ。2004年にリリースされる製品はすべてPCI Express対応となる。なお、FutureとなっているチップセットはTumwater

●クライアントに関しても2004年に対応シリコンを投入

Powersvilleを説明するスライド。Tejas、DDR2 SDRAM、PCI Expressをサポートすると説明されている

 Intelは2004年に、クライアントでもPCI Expressを投入していく。2日目に行われたIntel デスクトッププラットフォームグループ ジェネラルマネージャのルイス・バーンズ氏は「2004年に導入する標準プラットフォームデザイン例であるPowersvilleの仕様を公開したが、CPUはPrescottの次世代となるTejas(テハス)、PCI Express、DDR2、PCI Express Graphics、セキュリティ機能、Azalia(アゼリア)の開発コードネームで呼ばれるAC'97の後継となる次世代オーディオ機能などをサポートすると説明している。

 このPowersvilleに採用されるチップセットは、第2四半期にリリースされるCanterwoodおよびSpringdaleの後継となるチップセットとなる可能性が高い。現在までのところ、このチップセットの開発コードネームは判っていないが、情報筋から断片的に入ってきている情報を総合すると、Tejasで導入される1,066MHzのシステムバスをサポートし、デュアルチャネルのDDR2-533、PCI Express(x16、x4)をサポートすることになるという。つまり、ワークステーション用となるTumwaterのデスクトップPC版であると考えていいだろう。

 DRAMベンダがDDR2は来年の前半に立ち上がると説明していることと、Intelのチップセットのリリースサイクルから考えて、来年の第2四半期にこのチップセットが投入される可能性が高い。

 同じように、情報筋によれば、若干時期は遅れ、2004年の後半になる見込みのモバイル版も存在している。こちらは、Dothan、そしてその後継CPU用のチップセットとなる。こちらも、PCI Express x16をサポートすることになり、DDR2をメインメモリとしてサポートすることになるという。

 このように、クライアントにおいてもPCI Express対応のチップセットが投入される他、ギガビットEthernetコントローラとしてNorthway、さらに後藤氏が別記事( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0221/kaigai01.htm )で解説しているように、GPUベンダはPCI Express x16に対応したGPUも計画している。


●2003年は立ち上げ準備期間で、シリコンが出揃う2004年に本格的な普及を目指す

 PCI SIGのピエース議長は、「2003年は立ち上げに向けての準備期間となる。2004年には多くのベンダが対応製品を予定しており、2004年に本格的に立ち上がることになるだろう」と述べ、2004年にPCI Expressの本格的な普及が始まると述べたが、その裏付けは、プラットフォーム技術の大半を握っているIntelが、こうした強力なプランを持っていることだと考えてよい。

 また、PCI Expressのバリデーションプログラムもまもなく開始される。「第2四半期半ばには互換性チェックの最終チェックリストが提供される。さらに、第4四半期には完全な互換性検証プログラムを開始する予定だ」(ピエース氏)とのことで、こちらの方の準備も整いつつあるようだ。PCI Expressの対応製品ベンダには“2004年に照準を合わせろ!”が合い言葉になるだろう。

□IDFのWebサイト(英文)
http://developer.intel.com/idf/index.htm
□IDF Spring 2003のWebサイト(英文)
http://www.intel.com/idf/us/spr2003/index.htm
□関連記事
【2月20日】【元麻布】ギガビットEthernet専用チャネル「CSA」はPCI Expressの妨げとなるか?
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0220/hot246.htm
【2002年9月27日】【元麻布】明らかになってきた次世代シリアルバス「PCI Express」の仕様
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0927/hot222.htm
【2002年4月18日】【WinHEC】PCI-SIGが3GIOの正式名称を“PCI Express”と決定
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0418/winhec3.htm

(2003年2月23日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp 個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.