TECHXNYレポート【Intel編】

Intel ドナルド・マクドナルド氏インタビュー
~Pentium 4-Mは性能を、Baniasは機動性をアピールする

Intel ドナルド・マクドナルド氏

会期:6月25~28日
会場:Jacob K. Javits Convention Center



 TECHXNY/PC EXPOが開催されている会場において、Intelモバイルプラットフォームグループ マーケティングディレクタのドナルド・マクドナルド氏にお話を伺う機会を得たので、その模様をお伝えする。

 前日のレポートでは、Baniasのブランド戦略についてお伝えしたが、本インタビューではそうしたBaniasのブランド戦略やモバイルPentium 4-Mの今後などについてお話を伺った。

 なお、本インタビューはプレス向けのラウンドテーブル(共同インタビュー)として行なわれたもので、他誌の関係者も同席していたことをあらかじめお断りしておく。ただし、質問と回答は筆者が行なったものだけに限定した。


●年内にはモバイルPentium 4-Mのクロックは2.40GHzに達する

--Intelは今週の初めにモバイルPentium 4-M 2GHzをリリースしました。現在のIntelのモバイルに関する取り組みを教えてください。

マクドナルド氏:Intelブースを見て頂ければ、多くのベンダがモバイルPentium 4-M 2GHzを搭載したノートPCを出展してくれていることが理解してもらえると思います。

 多くの方に注目して頂いているBaniasですが、プロジェクトは順調に進んでおり、実際のシリコンを利用したデモはWinHECで行ないました。Baniasはモビリティ(機動性)を追求した製品となります。Baniasそれ自体はシリコンですが、当社としてはエンドユーザーのモバイル環境を整備する努力も続けています。

 例えば、ワイヤレス環境の整備です。ニューヨークのブライアント公園では、無料の無線LANサービスを行なっています。これはTECHXNY期間だけでなく、これからも続けていく予定です。今後、空港、駅、公園などで簡単に無線LANが使えるような取り組みを行なっていきます。これらは米国だけでなく、ワールドワイドで同じような展開を行なっていく予定です。これらの取り組みはモビリティを高めるもので、Baniasにとって非常に重要な取り組みです。

 Tablet PCも重要な取り組みです。Acerや富士通のTablet PCなどいくつかの製品に我々のCPUが採用されています。我々のCPU、チップセットは、低電力でかつ高性能を実現しており、これらはTablet PCに最適なソリューションだと考えています。

--今後のモバイルPentium 4-Mの展開はどうなるのでしょうか。

マクドナルド氏:モバイルPentium 4-Mは高い歩留まり、高性能、低消費電力を実現するなど、大変順調です。おそらく、今年中には2.20GHz、2.40GHzを出荷することが可能になるでしょう。我々の顧客は常にパフォーマンスを上げることを望んでおり、それに答えることは大変重要なことだと考えています。

●ロードマップにはモバイルPentium 4-Mの後継製品も予定されている

--昨日HPは米国において2.20GHzのデスクトップ向けPentium 4を採用したフルサイズノートPCを発表しました。デスクトップ向けPentium 4をフルサイズノートPCに使うのは今年の新しいトレンドですが、これについてはどう考えていますか。

マクドナルド氏:フルサイズのノートPCには2つのトレンドがあると思います。可搬性が高く、省スペースPCとして利用される製品と、モビリティ(モバイル性の高さ)を追求した製品の2つです。前者ではパフォーマンスが何よりも重視されるので、デスクトップPCのCPUが使われることが増えています。実際、デスクトップPCのCPUの方がクロックは高く、より高いパフォーマンスを持っているのは事実です。

 Intelのこの問題への立場は明快です。ユーザーがモビリティ、例えばバッテリー駆動時間や軽量さなどを重視するのであればモバイルPentium 4-Mをお奨めし、逆にそうしたモビリティが必要なく、省スペースデスクトップPCの代わりとして使いたいというのであれば、デスクトップPC向けのCPUでもかまわないというものです。

--OEMメーカーがデスクトップPCのCPUをノートPCに使いたがる最も大きな理由は、デスクトップPC向けとモバイルPC向けに存在する価格差です。今後価格差は縮まっていくのでしょうか。

マクドナルド氏:価格差を埋める最も有効な方法はロードマップをよりアグレッシブなものにすることです。例えば、デスクトップ用の最高クロックが3GHzで、モバイル用の最高クロックが2GHzであれば、(デスクトップ用とモバイル用の最高クロックの製品同士の値段はあまり変わらないので)クロックと価格の差は大きくなります。そこで、モバイルのクロックをより上げるようにすれば、価格差は小さくなっていきます。今年の末に向けて、その差をできるだけ縮めるようにロードマップをより強力なものにしていく予定です。

--現在のモバイルPentium 4-Mは0.13μmプロセスに基づいています。Intelは2003年に0.09μmのPrescottを出荷しますが、モバイル向けの展開はどうでしょう。

マクドナルド氏:それは2つの質問に分けることができると思います。1つは0.09μmをどの製品に利用するか、2つ目はモバイルPentium 4-Mの後がどうなるかです。

 現在の0.13μmはトランジスタのサイズでいえば0.07μmと非常に小さく、優れたダイとなっており、急いで0.09μmへ移行する必要性は低いでしょう。また、どのプロセスルールを利用するかはIntelの他のグループ、例えばサーバーグループ、デスクトップグループなどとも調整する必要があり、今のところ決定していません。

 現在は詳細は明らかにすることはできませんが、確かにPentium 4-Mの後継製品は存在します。フルサイズのモバイルPentium 4-Mに関しても3世代先まで予定されており、シン&ライト、サブノート、ミニノート向けのBaniasに関しても2世代先までが検討されています。

●モバイルPentium 4-Mではパフォーマンスを、Baniasではモビリティを追求する

--Baniasの話がでましたので、Baniasに話を移しましょう。IntelはBaniasをリリースすると、モバイルPentium 4-MとBaniasという2つの製品ラインを抱えることになります。そうした2つのブランドをプロモーションして行くには、ブランド戦略が非常に大事になってくると思います。Baniasのブランド戦略は既にお持ちですか。

マクドナルド氏:ええ、もちろんです。ただ、現時点では詳しいことをお話する段階にはありません。ブランドを構築するというのは大変な作業です。1つのブランドを構築するというだけでも挑戦的な作業ですが、それが複数にわたるとなると困難です。

 先ほどお話したデスクトップ向けCPUを搭載したノートPCのお話に戻りましょう。デスクトップPCではパフォーマンスがCPU選択の基準となりますが、ノートPCでも同じようなことが起きています。日本でもデスクトップCPUを搭載したDynaBookがリリースされていますが、それはその1例で、こうした製品ではパフォーマンスを追求することが非常に重要です。これに対して、シン&ライト、サブノート、ミニノートではモビリティが非常に重要です。Baniasではこうしたモビリティを追求していきます。

 現在ではモバイル性を必要するユーザーにはモバイルPentium 4-Mをお奨めし、Baniasが登場した後には、モバイルPentium 4-Mのラインはパフォーマンスを追求するユーザーに、Baniasおよびその後継製品はモビリティを求めるユーザーにお奨めしていくというのがIntelの戦略です。

--Pentium 4世代ではNetBurstマイクロアーキテクチャというブランドネームでハイパフォーマンスというアピールを行なっています。Baniasにも同じように、マイクロアーキテクチャやプラットフォームへのブランドネームを用意したりしますか。

マクドナルド氏:現時点では詳しいことをお話できる段階にはありません。ただ、Baniasはモバイルに特化した製品です。我々はモバイル向けの機能というのをプロモートしていこうと考えています。現時点では、オフィシャルに公開できるようなBaniasのブランドネームはまだ決定していません。

--無線機能は、今やノートPCの無くてはならない機能となっています。COMPUTEX TAIPEIであなたの上司であるアナンド・チャンドラシーカ副社長が「Baniasプラットフォームは無線LAN機能をサポートする」と発言していますが、どのような機能をサポートすることになるのですか。

マクドナルド氏:我々はOEMメーカーに対して802.11aと11bのデュアルバンドをお薦めしています。既に世界中には11bのアクセスポイントがあふれていますし、ビデオやファイルサイズの大きなデータを送るには11aが必須です。このため、デュアルチャネルが必要となるのです。

 我々はOEMメーカーに対してデュアルバンドをサポートするプログラムを提供していきます。それが“Calexico”という製品で、11aと11bのデュアルバンドをサポートする優れた製品です。我々はすべてのBanias搭載ノートPCがこうしたデュアルバンドをサポートすることになるだろうと考えています。

--IntelはCalexicoをどのように供給するのですか。

マクドナルド氏:OEMメーカーが望めば供給します。多くのOEMメーカーがCalexicoを必要とするだろうと予測しています。

--モバイルPentium 4-MではμFCPGAパッケージのみと提供となっていますが、Baniasではより薄型のパッケージ、例えばμFCBGAは提供されますか。

マクドナルド氏:Baniasに関しては複数のパッケージを提供します。Baniasのパッケージに関してはフルチョイスになると考えています。もちろん、その中にはBGAパッケージも含まれます。

□TECHXNYのホームページ(英文)
http://www.techxny.com/

(2002年6月28日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]

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