バイオU発売“勝手に”記念特別レポート(その3)
~活用編:いろいろな利用法を考える



 前回のレポートではバイオUのCPUであるCrusoe TM5800 867MHzのパフォーマンスとバッテリーの持ちを調べた。その中で、CrusoeはMMXに対応していないと書いてしまったが、これは正しくなく、正しくはMMXにのみ対応しているだ。ここにお詫びして訂正させていただきたい。

 なお、多くの読者からもご指摘をいただき、この場をお借りしてお礼を申し上げさせていただきたい。どうもありがとうございました。なお、Crusoeの拡張命令については、過去の筆者の記事でふれているので、興味があればこちらも参照していただきたい。

 さて、今回はバイオUの具体的な使い方を考えてきたい。バイオUの評価はいろいろあると思う。筆者はもちろん良い方向で評価したから購入したわけだが、例えばキーボードが打ちにくいとか、いろいろいいたいことはあると思う。まぁ確かにこれまでと同じようなPCの使い方、たとえばWordで文章を入力したり、PowerPointで資料を作ったりというような使い方をするのであれば、確かにキーボードは打ちにくいのかもしれない。そこで、今回は、キーボードが小さく液晶も小さいバイオUだからこそできる、筆者が思いつく限りのこんな使い方、あんな使い方というのを提案してみたい。



(1)持ち運びHDDと考えて、データをバイオUに詰め込み、ネットワーク経由で利用する

 まず最初に提案したいのは、バイオUを持ち運び可能なHDDと見なして、必要なデータをそこに集約し、家や会社にいるときにはネットワーク経由でバイオUのHDDのデータを利用し、外出時にはバイオUをネットワークからはずして持っていくという使い方だ。

 方法としては、すべてのデータファイルをバイオUのMy Documentフォルダに集めておき、このMy Documentフォルダを共有設定にし、家にいるときにはデスクトップPCなどからこれにアクセスする。

 具体的には、自分のMy Document(C:\Documents and Settings\(自分のユーザー名)にある)フォルダを探し、アイコンを右クリックしてメニューを出し、“共有とセキュリティ(H)”を選択する。すると、共有の設定が現れる。そこから“危険を認識した上でドライブのルートを共有する場合にはここをクリックしてください”というチェックボックスがあるので、ここにチェックを付ける。すると、“ネットワーク上でこのフォルダを共有する”というチェックボックスが現れるので、ここをチェックする。これで共有することができる。

 あとは、デスクトップPC(ここではWindows XPがインストールされているものとする)側から“マイネットワーク”のアイコンを開き、左側から“ワークグループのコンピュータを表示する”をクリック、表示されたバイオUのコンピュータ名(筆者の場合は“VAIO-U”)をクリックすれば、共有したMy Documentフォルダが表示される。これをデスクトップにでもドラッグ&ドロップして共有フォルダを作っておけば、デスクトップPCから簡単に使うことができる。

 ただ、問題はバイオUにインストールされているWindows XP Home Editionはネットワークフォルダの共有は可能だが、そのままではアクセス制限をかけることができないので、ネットワークにつながっているユーザーから丸見えになってしまうことだ。Windows XP Professionalであれば、ネットワークフォルダ単位でセキュリティを設定することが可能になる。「Windows XP Professionalステップアップグレードキット」を利用してWindows XP Professionalにするというのも悪くない選択だろう。ただし、このキットは5月31日までの限定販売なので入手を急ぎたい。

 データファイルはこれでいいかもしれないが、メールのファイルはどうするのだ? という疑問がでてくるだろう。筆者はメールソフトにマイクロソフトのOffice XPに含まれるOutlook 2002を利用している。Outlook 2002は標準でローカルにOUTLOOK.PSTというファイルを作成し、ここにデータの実体が保存されていく。Office XPはデスクトップPCとノートPCと、使う人が同じであれば2台のPCにインストールして使うことが可能になっており、バイオUにインストールしたOutlook 2002で作成したOUTLOOK.PSTをフォルダ共有し、これをネットワーク経由でデスクトップPCから利用する。

 方法としては、Outlookのデータファイルが保存されているフォルダを共有する必要がある。具体的には“C:\Documents and Settings\(自分のユーザー名)\Local Settings\Application Data\Microsoft\Outlook”を共有する。そして、デスクトップPCのOutlook 2002から、これをデータファイルとして指定すればよい。OutlookのデータファイルはOutlookのメニューから“ファイル(F)-データファイルの管理(E)”で、バイオUのOUTLOOK.PSTを追加すればよい。

 さらに、メールなどを保存する標準のデータファイルをバイオU上のOutlook.pstに変更する必要がある。Outlookのメニューから“ツール(T)-電子メールアカウント(A)”の順に選択し、普段利用する電子メールアカウントを選択する。それで“新着電子メールの配信場所(N)”で、2つ表示されている“個人用フォルダ”から下側の“個人用フォルダ”を選択する。これにより、電子メールのデータもすべてバイオUに集中することができる。なお、バイオU上のOutlookが起動していると、ファイルがロックされてしまうので、バイオUのOutlookは終了して、起動していない状態にしておく必要がある。

 これで、普段はデスクトップPCからバイオUのハードディスクにあるデータを利用しながら使い、出かけるときにはバイオUをネットワークからはずして持っていけば、いつでも必要なデータを外で使うことができる。こうした使い方をすれば、バイオUをモバイルハードディスク、しかもCPU、ディスプレイ、キーボード付きとして利用することができる。

Windows XP Home Editionで共有するには、“共有とセキュリティ”の設定で行なう “ネットワーク上での共有とセキュリティ”の項目で”ネットワーク上でこのフォルダを共有する”の項目をチェックする Outlook2002でデータファイルをバイオU上にあるOutlook.pstに設定すれば、データはすべてバイオUに集約できる


(2)デスクトップライクな使い方

 バイオUは、そのままで十分デスクトップPCになる。バイオUにはインターフェイスとしてUSBポート×2、IEEE 1394×1、外部ディスプレイ×1、100Base-TX対応Ethernet×1が用意されている。このため、ここに必要なデバイスを接続していけば、デスクトップPCライクに使うことができる。

 まず、USBポートにはUSBマウスとキーボードを接続する。さらに、IEEE 1394ポートにはソニーがオプションとして用意しているDVD-ROMドライブやDVD/CD-RWコンボドライブなどを接続する。さらに、外部ディスプレイポートにはオプションのPCGA-DA1Sというケーブルを介して外部ディスプレイを接続すればよい。PCGA-DA1Sは5千円弱で販売されており、おまけとして持ち運び用のケースがついてくる。

 これだと、(1)で説明したような、デスクトップPCからネットワーク経由でバイオUのハードディスクのデータを使うという使い方はしなくてもすむ。

 ただ、前回のパフォーマンスの記事でもふれたように、Crusoe TM5800 867MHzのパフォーマンスはPentium III 600MHz程度となっている。デスクトップPCのCPUとしては3年前のパフォーマンスであり、やや処理能力が足りないかもしれない。そう思う場合には、(1)で紹介したような使い方がお薦めだろう。

 ちなみに、筆者は無線LANカードとして3ComのXJACKアンテナがPCカードに収納できる3CRWE62092Aという製品を利用している。アンテナがPCカードから飛び出している無線LANカードを利用すると、モバイルグリップスタイルで持った時にアンテナが手に当たってしまうのだ。この3CRWE62092Aであれば、アンテナはカードに収納できるため、カードを入れたままでもモバイルグリップスタイルができるので、非常に便利だ。なお、ソニーでは純正カードとしてアンテナ部が小さいカードPCWA-C150Sが用意されているので、そちらを選択するというのもよい手だろう。

オプションを利用してバイオUをデスクトップPC相当にした様子。本体以外には、オプションのビデオケーブルPCGA-DA1S(ソニースタイルで4,980円)、IEEE 1394のDVD-ROMドライブPCGA-DVD1(同29,800円)、17インチモニター、USBキーボード、マウスを利用した ビデオケーブルPCGA-DA1Sを利用すれば、外部ディスプレイに出力が可能。なお外部CRTはプライマリモニタとしてだけでなく、セカンダリとしてマルチモニター構成もできる

3ComのIEEE 802.11b準拠の無線LANカード3CRWE62092A。実勢価格で18,000円程度と無線LANカードとしては高価なのが玉に瑕だが、アンテナが内部に収納できるのが便利

一般的な無線LANカードを使うと、モバイルグリップスタイルで利用した時にやや不便。3CRWE62092Aであれば収納できるので使いやすい


(3)MP3プレイヤーとして使う

 バイオUのように小型のPCであれば、これまでの大型のPCのように“がんばって持ち歩こう!”と決意しなくても気軽に持ち歩ける。そこで、鞄に放り込んで、MP3プレイヤーとして使うという使い方も検討してみたい。

 バイオUは20GBと、PDAなどとは比較にならない巨大ストレージを内蔵している。例えば、筆者は携帯用MP3プレイヤーとして、ソニーのCLIEを持ち歩いている。CLIEはメモリースティックにMP3ファイルをコピーして再生できるが、メモリースティックは現在最大で128MBとなっている。このため、時間にすると、だいたい2時間ぐらい、曲数にして20曲ぐらいが限界となっている。しかも、セレクションは出かける前にしなくてはならない。なぜならMP3ファイルをメモリースティックにコピーしなくてはいけないからだ。

 だが、これがバイオUならどうだろう? 内蔵HDDの20GBのうち5GBは、OSやプレインストールアプリケーションなどで利用済みとなっているが、15GB程度はあいている。これは128MBのメモリースティックの120倍で、曲でいえば2,400曲となる。これなら、一週間旅行に出かけたとしても、最後まで聞ききれないくらいの量だ。

 ソニーではバイオのオプションとしてバイオ ジョグリモコン「PCGA-JRH1」というものを発売している。これを利用すれば、液晶を閉じた状態でも操作が可能だ。

 バイオ ジョグリモコンは、単体でUSBオーディオデバイスになっており、ジョグダイヤルと液晶ディスプレイがついている。ジョグダイヤルに対応しているオーディオアプリケーション(バイオUにプレインストールされているSonicStageなど)などで利用可能で、再生、停止、トラックの送り、ボリューム調整などができる。なお、同じような型番の製品で「PCGA-JR1」というものがあるが、こちらは基本的に別の製品であり、バイオUでは使用できない可能性があるので注意されたい。

 実際に、プレインストールされていたSonicStageと組み合わせて使ってみたが、快適に利用することができた。本格的にバイオUをMP3プレイヤーとして使うのであれば検討してみたい。値段が9,800円とやや高いこと、さらにリモコンとしてはやや大柄であることが弱点であるといえるが、純粋なデジタルデバイスであるため、音もクリアで筆者個人としては結構気に入っている。

バイオジョグリモコンはUSBオーディオとして動作し、ウォークマンのリモコンのように使うことができる。価格が9,800円(ソニースタイル)とやや高いことが弱点 このように鞄に本体を入れて、手元ではジョグリモコンで操作すれば、PCをウォークマン感覚で使うことができる


(4)電子ブックリーダーとして使う

 バイオUにはアドビが配布しているeBook Readerが標準添付されている。eBook Readerを利用すれば、コンテンツ作成者は不正コピーを防ぎつつ電子ブックの配布ができるようになる。

 例えば200時間だけ読みとり可能など、時間を限定した配布なども可能になり、電子ブックの配布環境として注目を集めている。eBook ReaderはアドビのWebサイト( http://www.adobe.co.jp/products/ebookreader/register.html )からダウンロードできるため、既に利用しているユーザーも少なくないと思うが、ソニーによれば日本国内でPCにバンドルされた例は初めてだという。

eBook Readerを読むときに、このように横に倒して利用することで、まるで文庫本を読んでいるかのように利用できる。やってみると、意外と快適

 このeBook Readerだが、実際に使ってみるとバイオU向きであることがわかる。というのも、eBook Readerは画面を横に倒して使うことができる。この状態でバイオU自体を横にすると、まるで文庫本を読んでいるような感覚でeBookを読むことができる。これはやってみると意外と快感で、次々と電子ブックをダウンロードして楽しみたくなる。横に倒した状態でも、矢印キーを利用してページめくりが可能で、快適だ。

 ところで、バイオUではジョグダイヤルを利用してスクロールが可能だが、横にするとジョグダイヤルはあまり使いやすい位置にならないので、実際にはあまり意味がない。ぜひ、次機種ではキーボードの手前に、ジョグダイヤルを取り付けて、電子ブックのページめくりをジョグダイヤルで操作できるようにして欲しいものだ。

 eBookの“書店”ボタンを押すことにより、インターネット上の電子書店に接続され、無料の体験版をダウンロードしたり、正式版を購入したりできる。いくつかの電子書店が用意されているが、例えばイーブックイニチアシブジャパン( http://www.10daysbook.com/adobe/ )では仮面ライダーや鬼太郎大全集など、懐かしの漫画がラインナップされていて、バイオUにはこれらの第1話が体験版としてバンドルされている。このほかにもフランケンザ★コミックショップ( http://www.franken.com/ )では大手各社の漫画がデジタルにされており、各漫画の第1話は体験版として420分限定で読むことができる。オンライン書店パピレス( http://www.papy.co.jp/ )では、一般書の電子ブック販売が行なわれている。

 例えば、外出前にこれらをダウンロードしておけば、出先で本を買う代わりにバイオUで本を読む、ということが可能だ。逆に言えば、書店が見つからないというような環境でも、通信経路が確保できていればインターネットからこうした電子ブックをダウンロードして楽しむことができる。eBook Readerは別にバイオUユーザーでなくとも利用することができるので、興味があるユーザーはアドビのホームページからダウンロードして、上記のWebサイトなどから体験版をダウンロードしてみるとよい。意外とはまること請け合いだ。


(5)出先でビデオビューア

 最近ではPCにテレビチューナーカードを入れ、PCでテレビ番組などを録画して楽しむという使い方もだんだんと当たり前になってきた。例えば、筆者はカノープスのMTV1000をTVチューナーカードとして利用している。だが、当然のことながら、これらはデスクトップPCで利用するもので、家にいないと見ることができない。そこで、録画したファイルをバイオUに入れておけば、簡易ビデオビューアのできあがりだ。筆者の使い方としては、MTV1000でタイマー録画したMPEG-1ファイルをバイオUに入れて出先で見るというのが意外と快適。これまでだったら電車の中で、PCを出してMPEGファイルを見ようという気にはならなかったのだが、バイオUであれば、ちょっと出して、さっきの続きからという使い方もする気になる。

 以上のように、筆者の乏しい想像力で思いつく使い方を考えて、実践してみた例を紹介した。こうした使い方は、これまでのPCではあまりやる気にならないものだった。だが、バイオUのようにPCが小型化されたことで、これまでのPCではやる気にならなかった使い方もできるようになる。このほかにも、これまでのPCでは考えもつかなかったような使い方をするユーザーがでてくるだろう。

 さて、これまでバイオUを2週間使ってきて、言いたいこともいろいろでてきた。例えば、ハードディスクの容量だ。筆者個人としては20GBというハードディスクの容量は十分ではない。というのも、Outlookのデータだけで2GB近く、My Documentsフォルダには25GB近くのデータがあり、Windowsやアプリケーションをインストールする領域を考えれば、40GBのハードディスクは必須といえる。1.8インチドライブを採用しているという技術的な限界で、20GB以上のドライブを搭載するのは難しいという事情はわかるが、やはりハードディスクは大きければ大きいほどよい。

 ポインティングデバイスももう少し改善の余地があると思う。確かにモバイルグリップスタイルで、握って持つことで立ってでも使えるようになった点は評価している。だが、スティックの使い勝手はもう少し改善して欲しい。使っていると、急に勝手にポインターが動いてしまったりなどという場面に直面することが少なからずあった。次モデルではぜひ改善して欲しい点だ。

 筆者にはこのバイオUは、エンジニアからのユーザーに対する挑戦状に思えて仕方がない。「ほらほら、こんなの作ったよ! どう使ってくれるの?」というものだ。PCのよいところは、使い方が決して決まっているわけではなく、ユーザー側でいろいろ工夫することにより、さらに便利に使えるところだ。これは、ユーザーがいじれる余地が少ないPDAやデジタル家電などが逆立ちしてもPCにかなわない点だ。

 筆者はバイオUを購入して以来、これまではPCを持ち歩いていなかった時、例えば買い物や旅行先などにもPCを持ち歩くようになった。PCの利用度はこれまでに増してあがったと感じている。そうした意味では、ユビキタス時代、すなわち、いつでもどこでもPCを使う時代に近づいたのではないかと感じている。

 是非他メーカーにもこうしたコンセプトの製品には続いていって欲しい。そうすることにより、よりユーザーに選択肢が広がり、本当にユーザーが気軽にデータを持ち歩ける、そんなシーンが実現することを望みたい。

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【5月8日】バイオU発売“勝手に”記念特別レポート(その2)
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【4月17日】ソニー、世界最小/最軽量のモバイルノートPC「バイオU」
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(2002年5月14日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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